ウリ科果実の低温障害と果実組織切片からのイオン漏出について
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概要
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ウリ科果実の低温障害について調べる目的で, 品種および熟度の異なったキュウリについて, 低温耐性を低温下でのピッティングの発生状況から調べた. また, 貯蔵中のキュウリ, シロウリ, カボチャの果実組織からの電解質漏出速度の変化について調べ, これら果実の低温障害の発生と膜透過性との関係について考察した.1. キュウリ品種の低温耐性にはかなり差が認められ, 障害発生期間は0°Cで4〜8日, 5°Cで5〜15日と差がみられた. 一般に東洋系品種に比べて西洋系(サラダ用, ピックルス用)は低温耐性が強いようであった.2. キュウリ(宝来)は熟度が進むと低温耐性が強くなり, 種子が完熟した熟果は0°Cで3週間障害の病徴のピッティングが発生しなかった.3. 低温障害に対して安全な温度(20°C)と危険な温度(0〜5°C)にキュウリを貯蔵し, 定期的に出庫し, 果肉組織の切片を作り, 脱塩水中に漏出する電解質の量を測定し, 漏出速度を求めたところ, 低温障害の発生に伴って漏出速度が急増することが認められた. この傾向はほぼ等張液の0.4Mマンニトール水溶液中でも同様であった.4. 5°Cに貯蔵したキュウリを貯蔵中12.5°Cに変温し, 1日後の電解質漏出速度を調べたところ, 低温障害が発生する2〜3日前から変温によって電解質漏出速度が増大する現象が認められた.5. シロウリ, カボチャについても調べたが, シロウリでは0°Cで低温障害が発生した2週間後, カボチャでは4週間後頃から組織切片からの電解質漏出速度は急増した.以上のようにウリ科果実は種類, 品種, 熟度によってかなり低温耐性に差異が認められるが, いずれの場合も臨界温度以下である期間貯蔵後, 組織からの電解質漏出速度が急増した. この低温による膜透過性の増大はウリ科果実の低温障害発生に密接に関連するものと推論した.
- 園芸学会の論文
著者
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邨田 卓夫
静岡大学農学部青果保蔵学研究室
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辰巳 保夫
静岡大学農学部青果保蔵学研究室
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岩本 光弘
静岡大学農学部青果保蔵学研究室
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邨田 卓夫
静岡大学農学部
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辰巳 保夫
静岡大学農学部
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岩本 光弘
静岡大学農学部
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