甘ガキと渋ガキのタンニン物質の化学的特性, 特に超遠心分離における挙動の差異について
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概要
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Pollination constant の甘ガキ‘富有’及び pollinationvariant の渋ガキ‘平核無’の果実を用い, そのタンニン物質の特性を明確にするために, 超遠心分離によるシュリーレン•パターンの測定及びアセトアルデヒドとの反応性を調査した.まず, タンニン物質のシュリーレン•パターンを測定するために, 両品種の果肉の含水アセトン抽出物中のタンニン物質を分子ふるいクロマトグラフィー (担体CPG-10 2000Å) により, F-I及びF-IIの2つの分画に分離した. この各分画のタンニン濃度を一定にした後, 3日間40°Cで incubate し, incubate 前, 1日目, 3日目にそれぞれの分画液の一部をとって超遠心分離を行った. 両品種とも, F-I及びF-II分画は単一のタンニン成分ではなく, 3ないし4成分で構成されていることが認められたが, いずれの場合も‘平核無’の各タンニン成分の沈降係数は, それに対応する‘富有’のタンニン成分の沈降係数より大きかった. また,‘平核無’のF-I分画のタンニン成分は, incubate 期間中に複雑な変化を示し, 認められなくなる成分 (26S及び23S)や新たに生じる成分 (6S) があったが,‘富有’のF-I及びF-II分画, 並びに‘平核無’のF-II分画については, incubate 中に構成成分の変化はみられなかった.次に, タンニン物質のアセトアルデヒドとの反応性を調べるために, タンニン濃度及びpHを数段階に変えた果汁を, 0.15%のアセトアルデヒド溶液の入ったデシケータ内 (30°C) において密閉し, アセトアルデヒド蒸気中でそれぞれの果汁が凝固するまでの時間を測定した.果汁の凝固にはタンニン濃度が小さくなる程, また, pH3.0から5.0の間で両品種とも長時間を要したが, いずれの濃度及びpHにおいても,‘富有’の果汁の凝固速度が遅かった.以上のことより,‘富有’のタンニン物質は,‘平核無’のタンニン物質よりも低分子領域のタンニン成分で構成されており, 化学的な反応性も小さいことが示唆された.
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