慢性肝疾患における血漿膵グルカゴン : とくに膵グルカゴン特異抗体による相違と胆汁酸の影響について
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概要
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慢性肝疾患61例, 健常者22例について, 2種の膵グルカゴン特異抗体30K及びOAL-123を用いて, 血漿膵グルカゴン (IRG) を測定した. 30K-IRG, OAL-IRGいずれも肝硬変症では有意に上昇を示したが, 2種の抗体によりIRGの差のある症例も認められた. その原因について, in vitro での胆汁酸の測定系に及ぼす影響, 血中総胆汁酸との関係を検討した.慢性肝疾患における空腹時の血漿膵グルカゴンは慢性肝炎では増加の傾向がみられ, 肝硬変症では30K-IRG, OAL-IRGそれぞれ288±42pg/ml, 297±41pg/mlといずれも健常者の約3倍に上昇していた (いずれもp<0.01). 慢性肝疾患での30K-IRGとOAL-IRGは回帰直線Y=0.699X+35.5, 相関係数γ=0.567で有意の正の相関が認められた. しかし肝硬変症及び肝性脳症では30K-IRGとOAL-IRGが著しい相違を示す症例が存在した.30Kを抗体として用いたRIA系では胆汁酸とくにグリコデオキシコール酸及びグリココール酸の添加により30K-IRGが増加したがOAL-IRGはこれらの胆汁酸の影響は認められなかつた. 更に30K-IRG>OAL-IRGの症例では, 血中胆汁酸の増加も認められた. すなわち, 30K-IRG>OAL-IRGという相違が血中に増加している胆汁酸に起因している可能性を示している.これらのことは肝疾患や胆汁うつ滞などの血中胆汁酸の上昇するような病態では, 30K-IRGが真の血漿膵グルカゴンの変動を反映しないことを示唆しており, 測定上重要な問題と考えられる.
著者
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瀬戸口 敏明
宮崎医科大学
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大工原 恭
鹿児島大学
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合田 栄一
鹿児島大学 歯 口腔生化
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坪内 博仁
鹿児島大学
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橋本 修治
鹿児島大学 第2内科
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永浜 重遠
鹿児島大学医学部第2内科
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上別府 篤行
鹿児島大学医学部第2内科
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藤崎 邦夫
鹿児島大学医学部第2内科
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弘野 修一
鹿児島大学医学部第2内科
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岡 春己
鹿児島大学医学部第2内科
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宮崎 博臣
鹿児島大学医学部第2内科
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