下水道管渠の汚水および底泥中に存在する硫化水素量の測定ならびに換気風量の推定
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概要
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ゴミ焼却場,し尿処理場,下水道ならびに地下鉄工事などの地下管渠や汚水槽内での作業時に,事前に内部の気中濃度の測定から安全を確認した上で坑内や槽内に入った作業員が急性の中毒事故で倒れる例が多発した<SUP>1)</SUP>。従来から,これらは酸欠事故とされてきたが,急性の硫化水素事故であることが明らかとなり<SUP>1)</SUP>,労働省は,昭和57年5月に労働安全衛生法を改正し<SUP>2)</SUP>,指定危険場所での濃度測定と換気および作業員教育を義務づけたが,同様の中毒事故は後を断たない。<BR>硫化水素は,有機物の嫌気性分解によって発生し,対空気比重が1.19<SUP>3)</SUP>と大きく,底部に滞留する。また,水に対する溶解度も0.38g/100g-w (20℃)<SUP>4)</SUP>と比較的大きく,坑内や槽内に多量の水が存在する場合には,空間濃度の測定のみでは,安全の確認にはなりえない。すなわち,汚水や底泥中には多量の硫化水素が捕捉されでおり,急激な攪絆によって,致死量を超える硫化水素が瞬時に空間内に放散されることが報告されている<SUP>1)</SUP>。<BR>このことは,閉鎖系の作業現場では,重大な事故発生を暗示しており,作業者が坑内や槽内に入る前に,汚水や底泥中の硫化水素量を測定,把握するとともに,最大発生時を想定した換気等の予防対策を講じることの必要性を示している。<BR>一方,水中や底泥中に存在する硫化水素の測定方法としては,従来から,よう素滴定法5),メチレンブルー吸光光度法<SUP>5)</SUP>による硫化物の測定値から硫化水素へ換算する方法が用いられている。しかし,硫黄の存在形態は多様で,この換算値は必ずしも存在する硫化水素量とは対応しない。また,硫化物の直接測定は,共存物質の影響を受けやすく,硫化水素だけを選択的に測定できる方法としては,精度的に確立された方法はなく,空気置換法の検討<SUP>6)</SUP>もなされているが,精度などの問題点も残されている。そこで,本研究では,実際の汚水および底泥中に存在する硫化水素量を簡易的,かつ高い精度で測定できる方法として,汚水のストリッピングによる測定法を新たに検討するとともに,作業時における硫化水素の最発生時を想定して汚水中からの発散量を推定し,この値をもとに坑内作業中の気中の硫化水素濃度を安全なレベルに保つための必要換気量を算出した。<BR>なお,本測定に用いた試料は,昭和62年4月に,東京都の下水道管渠内の清掃作業開始直後に人身事故<SUP>7)</SUP>の発生した場所においで採取したものである。
- 日本衛生学会の論文
著者
-
大迫 政浩
国立公衆衛生院
-
西田 耕之助
京大 工 環境微量汚染制御実験施設
-
西田 耕之助
京都大学工学部附属環境微量汚染制御実験施設
-
大迫 政浩
京都大学工学部附属環境微量汚染制御実験施設
-
西田 耕之助
京都大学工学部衛生工学教室
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