農村における鉤虫および回虫の予防,撲滅に関する研究 : 第4報 群馬県一農村部落における回虫予防,撲滅の野外試験
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概要
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群馬県吾妻郡中之条町高津部落(23世帯,約180人)を対象に,1953年7月より57年7月まで,満4年間鉤虫撲滅の野外試験と併行して,回虫予防,撲滅の野外試験(24回の集団検便,23回の集団駆虫,屎尿のCS2処理)をおこない次の結果を得た。1) 当初1年間は毎月の集団駆虫繰り返しで,回虫卵陽性率は66.1%から20%前後に低下し,駆虫間隔を3ヵ月としたところ,陽性率は30%以上となつたが,その後は再び20%前後を示し,4年目は年2回の実施にも拘らず,回虫卵陽性率の増加はみられなかつた。しかし半年間ごとの累積陽性率でみると,漸減傾向がみられた。2) 回虫新・再感染の季節的消長は明らかでなく,常時回虫感染はみられ,性別感染率では成人,学童において女子は男子より高率であり,生活型別感染率では幼児は成人,学童に比して高率であつた。3) 回虫感染速度は,当初陰性者の累積陽転率をみると,約1年後50%,満4年後70%であつた。それに反して当初陽性者の陰転後の累積陽転率は3ヵ月後50%,半年後76%,4年後96%であつた。4) 世帯別延回虫卵陽性率ははなはだしい差を示し,しばしば再感染を繰り返す家族としからざる家族とがあり,感染濃度は前者には受精卵陽性者が多く,後者はほとんど不受精卵陽性者で,回虫感染の家族集積性が認められた。概して当初において家族陽性率の低かつた世帯はその後の陽性率も低かつた。5) 世帯別延回虫卵陽性率と土間,庭,野菜畑(山東菜,白菜,大根)土壌中検出回虫卵数および仔虫卵数との間には密接な関係が認められた。また父母の学歴年数,経済状態(所得税額,畑耕地面積),肥溜有無との間にも関連があつた。6) 家庭内回虫卵汚染状況を知るために,土間土を各世帯別に3年間,9回検査したが,全世帯に回虫卵を検出し,91.3%に仔虫卵を検出した。3年目の回虫卵検出数は当初2年の回虫卵検出数に比して,はなはだしく減少を示し,地域全体としても回虫卵汚染が稀薄になり,予防,撲滅効果が漸次あらわれてきたと思われた。また蟯虫卵は14世帯(60.9%)から検出された。7) CS2の屎尿処理による回虫予防効果は肥溜内回虫卵がほとんど死滅していたにも拘らず,野菜畑土壌からは多数の回虫卵(うち67.5%が仔虫卵)を検出したこと,回虫卵陽性者の激減はみられなかつたことよりみて短期間における効果は期待できないと思われた。8) 各世帯別に白菜漬,漬物汁を調査したが,疑わしい2例を除けば回虫卵を検出できなかつた。
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