蝸牛における末梢自律神経の形態的研究
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概要
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自律神経と内耳機能が密接な関係を有することは古くより注目されており, 多くの研究報告がある. しかし, 自律神経の内耳における分布状態およびその経路に関しては, 今日なお不明瞭な点が多い. これは自律神経を特異的に染色する決定的な組織学的方法がなかつた為と思われる. しかし, JaboneroやThiesによつて, 自律神経の末梢形態が或る程度鑑別出来るようになつた. その点に鑑み, 鈴木氏鍍銀法を用いて,成熟白色家兎の蝸牛における自律神経線維を識別出来たので報告する.<BR>蝸牛において自律神経が比較的多く認められたのはPlexus cochlearisである. その線維は周囲の血管と密接な関係を有していた. この部分の血管は平滑筋を有しており, Plexus cochlearisは蝸牛における大きな血液貯蔵庫でもある. 従つて, 蝸牛における自律神経の意義が循環調節にありとするならば, その主たる分布がPlexus cochlearisにあつて当然である. また, Plexus cochlearis内に自律神経性のGanglionを発見した. 交感神経はGrenzstrangでNeuronをのりかえ末梢に至るに反して, 副交感神経は末梢のごく近くでGanglicnを形式するのが普通の経過であるから, これは副交感神経性のものではないかと類推した.<BR>Modiolusの聴神経束内に, ところどころ聴神経と平行して走る自律神経様の線維が見られた. しかし, その可能性を示唆するにとどまり断定するには至らなかつた. 今回の標本ではLamina spiralis osseaは濃染しており十分な検索は出来なかつた.<BR>膜迷路ではLigamentum spiraleにおいてのみ, わずかの自律神経線維を認めた. ここでは基質の中に散見され, 血管との関係を見出せなかつた. 恐らく栄養神経としての役割を荷つているものと思われる. Limbus spiralisの表層近くにもfeinなNetzを見るようであるが定かでなく, Stria vascularisは濃染する為, Corti器は十分な形態を得ることが出来なかつた為今回は十分な観察をすることが出来なかつた.
- 社団法人 日本耳鼻咽喉科学会の論文
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