両側顔面神経麻痺症例
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概要
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最近われわれが経験した両側顔面神経麻痺の3症例について報告するとともに,1963年から1972年までの本邦での両側顔面神経麻痺の報告例について検討した.症例1 両側外傷性顔面神経麻痺 27才♂自動車修理中,自動車の下敷となり,両側顔面神経麻痺に陥つた.右側は保存的療法で完全治癒したが,左側は顔面神経圧排術を行つて完全治癒せしめた.症勢2 多発性神経炎 28才♀上下肢のしびれ感とともに,両側顔面神経麻痺が出現した.副腎皮質ホルモン療法を主体とした治療で3週間後に完全治癒した.この症例は両側Bell麻痺との鑑別が困難であつた.症例3 Heerfordts syndrome 35才♀左顔面神経麻痺の10日後に右側顔面神経麻痺となり,1ヵ月後両側耳下腺の腫張を来した.当院外科でscalenus biopsyの結果,典型的なsareoidosisという病理診断をうけた.眼科的にはsarcoidosisによる変化と考えられる虹彩プドウ膜炎が認められた.耳鼻咽喉科初診時所見は,両側顔面神経麻痺の他に,両側反回神経麻痺左軟口蓋麻痺がみられた.内科に入院の上,副腎皮質ホルモンを主体とした保存的療法で上記脳神経麻痺は軽快した.われわれは過去11年間に705例の末梢性顔面神経麻痺患者のうち,12例に両側顔面神経麻痺がみられた.過去10年間の本邦の報告例はわれわれの症例をのぞいて19例であつた.両側顔面神経麻痺の原因は,系統的疾患にもとずくものも少なくなく,これらの患者の診察にあたつは,特にこの点に留意しなければならないことを強調した.
著者
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玉置 弘光
大阪大学耳鼻咽喉科教室
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杉山 茂夫
大阪大学耳鼻咽喉科教室
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野村 侃
大阪大学耳鼻咽喉科教室
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陌間 啓芳
大阪大学耳鼻咽喉科教室
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杉山 茂夫
大阪大学耳鼻咽喉科学教室
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玉置 弘光
大阪大学耳鼻咽喉科学教室
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