鼻壊疽性肉芽腫に関する症例とその考察
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
鼻腔に初まる壊疽が慢性的に周囲に波及し, 結局死に至る予後不良かつ本態不明の疾患を, 従来より進行性壊疽性鼻炎と呼んでいる. 該病変に関する記載は, 外国では1896年のMc. Brideの, 本邦では1912年の山川の報告を最初とし以来幾多の報告をみている. しかし病変が局所のみならず全身に波及するものもあり, これをWegenerが報告しており, その分類および本態につき, なお一層考察されるに至つた.<BR>今回, 該疾患をもち結局死亡した61才・男子の症例を得たので, その全経過を報告すると共に, 鼻腔に初まる壊疽性病変につき考察した.<BR>該疾患の分類についてはWaltonによるものが比較的妥当と考えられ, 一般に用でられている. 我々も理論的にはRetikulosarkom, Wegenersches Granulom, Rhinitis Gangraenosa Progressivaの三者に分けるべきものと考えている. しかし, 一般的には明確な診断を下せる場合の方がむしろ少なく, 本症例も肉腫ではなかつたが他の二者の要素を兼ねそえており, いづれかに決定する事は出来なかつた. 従つて臨床的には原則として細別診断をせず, 「悪性壊疽性肉芽腫症」として治療しながら, 経過観察するのが妥当ではなかろうか.<BR>また, その本態についても炎症説・腫瘍説・アレルギー説・膠原病説等があるが, 依然として現在なを不明である. 移行型の豊富なこの疾患群を, 現今では臨床所見の現われ方や, ある時期の病理標本を眺めて分類しているに過ぎない. よつて本症例に鑑み, 現在不明である本態に何んであれ同じものと考えられ, その追求には今までとは全然異つた角度からの研究によつてのみ, その解明の手がかりが得られる様に思われるのである.
- 社団法人 日本耳鼻咽喉科学会の論文
著者
関連論文
- 両側顔面神経麻痺症例
- 顔面神経の露出を伴う片側性の臨床的耳硬化症を疑わしめる症例とその考察
- 家族性の反覆性顔面神経麻痺症例
- 蝸牛における末梢自律神経の形態的研究
- 鼻壊疽性肉芽腫に関する症例とその考察
- 耳鼻咽喉科領域におけるKanendomycinの使用経験