家族性の反覆性顔面神経麻痺症例
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概要
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末梢性の顔面神経麻痺は我々が日常遭遇するごく普通の疾患である.しかし,その麻痺が両側にわたる場合や,同側で2度以上反覆する場合は稀有のことである.最近,我々は2年の間隔をおいて左右の末梢性顔面神経麻痺を起した症例を経験した.さらにその弟が5年の間隔で左側の末梢性顔面神経麻痺に2度罹患していることがわかつた.しかも両者は2度の麻痺とも完全治癒しており,このような症例はきわめて稀らしいと思われるので,その概要を報告諾干の考察を加えた.両側性の末梢性顔面神経麻痺の発生頻度を文献的に考察したが,全症例の約2%と思われる。しかし,同側で麻痺が反復する再発性麻痺については明らかでなかつた.従来,顔面神経麻痺の誘因あるいは素因の一つに糖尿病が挙げられている.統計的には密接な関係が見られないが,本症例は両親と同胞3人が全員糖尿病に罹患しており,糖尿病が家族発生に何等かの役割を果しているように思われた.糖尿病は副腎皮質ホルモン禁忌の疾患とされているが,本症例では血糖に注意しながら使用した.しかし,顔面神経麻痺罹患以前の患者の血糖値と大差なく,本症例では特に影響はなかつたものと思われる.これを説明するために,糖尿病の病態,糖尿病えの副腎皮質ホルモンの影響等について考察した.
- 社団法人 日本耳鼻咽喉科学会の論文
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