顔面神経の露出を伴う片側性の臨床的耳硬化症を疑わしめる症例とその考察
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概要
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アブミ骨およびその周辺に限られた畸型は非常に珍しく,耳硬化症は欧米人に多く鋼本人には比較的少い疾患である.その難聴は進行性または固定性で,手術による以外改善させる方法はない.最近Stapedektomieを施行した症例で特異な所見が見られたので,その詳細を報告し考察を加えた.第一は耳硬化症と考えれば片側性であつたことである.通常,耳硬化症の難聴は左右対称盤の経過をたどることが多く,文献的に眺めた片側性耳硬化症の発生頻度は,Larsson 15%,後•13.7%,Cawtho-rne 4%,堀口0%である.我々も9年間に28例中2例(7.1%)を見るにすぎず,非常に少い症例であると・える.臨床的耳硬化症のアプミ骨病変の状態に関しても,欧米人では可成りの症例が高度かつ広範な障害を示す.日本人では交献的にも我々の経験でも,殆んどがいわゆる Ringbandsklerose である.時にアブミ骨底が全体に肥厚する症例を見るが,その輪郭は識別することが出来る(Verdickung).本症例は一面に壁土をぬりつけたようで,アブミ骨底自体を認識できない状態であつた(Vermauerung).我々には初めての経験であり,日本人の耳硬化症としてはその例を見ないようである.本症例では顔面神経がFacialiskanalに沿つて広く露出していた.またアブミ骨自体変形してえり,その前脚は殆んど痕跡的であつた.これは露出して来た顔面神経に圧追され,いわゆるDruckatrophieによつて変形したのではないかと考えられる.しかし年令,聴力図,手術時所見から耳硬化症ではなく,アブミ骨周辺に限られた畸形とも考えられる.いずれにせよ手術時スチールピスFンは,顔面神経を避けて斜めに挿入せざるを得なかつたが,会話領域の術後気導聴力は20dBまで改善することができた.
- 社団法人 日本耳鼻咽喉科学会の論文
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