妊娠中に化学療法を施行した卵巣卵黄嚢腫瘍の1例

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妊娠中に悪性腫瘍と診断された場合の取り扱いについては原則として母体の治療を優先するが，近年妊娠を継続しつつ化学療法を含めた治療を行い母児ともに良好な経過を得ている報告も蓄積しつつある．今回われわれは妊娠中期に診断された卵巣卵黄嚢腫瘍に対して，妊娠を継続しつつ手術治療と化学療法を施行した症例を経験した．症例は23歳，増大する下腹部腫瘍の診断で妊娠19週に当科へ紹介受診となった．超音波検査およびMRI検査で充実性部分を伴う多嚢胞性腫瘤を認め，また血中AFP値が94128ng/mlと異常高値を示したため卵巣胚細胞悪性腫瘍を強く疑った．妊娠21週に左付属器摘出術施行し，病理組織検査の結果，卵黄嚢腫瘍Ic(b)期と診断された．2009年5月にInternational Gynecologic Cancer Society （IGCS）とEuropean Society of Gynecologic Oncology （ESGO）より発行されたガイドラインに基づき，妊娠23週から3コースのパクリタキセル・カルボプラチン療法を施行した．加療中の胎児発育，超音波検査，胎児心拍図にとくに異常はなく，妊娠39週に自然経腟分娩となった．出生児にはとくに異常はなく，母体も現在まで再発なく経過している．悪性腫瘍を合併した妊娠において妊娠継続中の化学療法は治療の選択肢になり得ると考えられる．しかし，その実施においては，そのメリットとデメリットに関して十分なインフォームド・コンセントを得ることが必要である．〔産婦の進歩63（2）：121-126，2011（平成23年5月）〕

妊娠中に化学療法を施行した卵巣卵黄嚢腫瘍の1例

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