HBV感染事故に対する抗HBs人免疫グロブリンの使用経験
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概要
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当院におけるHBV感染事故で,事故者がHBs抗原・抗体ともに陰性であった41例に事故後48時間(多くは24時間)以内に抗HBs人免疫グロブリン(HBIG)を筋注した.投与後2週間以内に全例に抗HBs抗体をみとめた.重篤な副作用は全く認められなかった.40例には抗HBc抗体の出現もみられなかったことより,感染は血清学的に否定できた.急性B型肝炎の発症は1例(看護婦)にみとめたが,HBe抗原陽性血の注射針事故によるものであった.同様の症例(他院より転院)をその後にもう1例経験した.HBIGを投与したにも拘らず発症した急性B型肝炎の潜伏期間は,それぞれ19週,30週であり,HBIGを投与せずに発症した急性B型肝炎の潜伏期間に比べて長い傾向にあった.この所見は英,米よりの報告を支持している.<BR>したがってHBIG投与例の追跡検査は6ヵ月では不充分であり,少くとも9ヵ月間とすべきであり,できれば1年まで行うのが望ましいと考える.さらに事故発生後早期(48時間以内)にHBIGを投与しても感染・発病を予防しえない例もあることから,今後はワクチンを含めた院内感染予防対策の検討が必要である.なお当院に入院したHBV感染事故による急性B型肝炎7例の感染源はすべてHBe抗原陽性患者であった.
- 社団法人 日本肝臓学会の論文
著者
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田中 慧
都立駒込病院・肝臓肝臓内科
-
清水 勝
都立駒込病院輸血科
-
坂本 久浩
都立駒込病院輸血科
-
原田 英治
都立駒込病院内科
-
大竹 寛雄
都立駒込病院内科
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大林 明
都立駒込病院感染症科
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児玉 龍彦
都立駒込病院 感染症科
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岡田 吉博
都立駒込病院 感染症科
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小町谷 恭平
都立駒込病院 感染症科
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田中 慧
都立駒込病院 内科
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原田 英治
都立駒込病院 内科
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坂本 久浩
都立駒込病院 輸血科
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大林 明
都立駒込病院 感染症科
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清水 勝
都立駒込病院 輸血科
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大竹 寛雄
都立駒込病院 内科
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