扁桃の局所免疫能と免疫学的位置づけに関する研究
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概要
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扁桃の免疫学上の位置づけという基礎的な問題は,扁摘の時期をいつに置くかという,臨床的な問題と密接な関係をもつている.扁桃が,胸腺やファブリシウス嚢と同じような中枢性リンパ組織か,脾やリンパ節と同様な末梢性リンパ組織であるかを解明するために,中枢性リンパ組織は抗原の認識をし,抗体の産生を末梢リンパ組織に指令するが,それ自身は抗体の産生を行なわないという性質を用いて,扁桃局所における抗体の産生を証明することによつて,扁桃が末梢性リンパ組織としての位置にあることを論述せんとしたものである.実験方法:家兎を用いて次の二つの実験を行なつた.1. Jerneの抗体プラク法家兎を若年期群(生下時胸腺摘出を行なつたもの,および対照群)と成熟家兎群とに分け,羊赤血球を抗原として,扁桃,リンパ節,脾に対して,Jerneの抗体プラク法を行なった.2. 3H標識胸腺の移植による細胞移行実験同腹仔を用いた.腹腔内に3H-Thymidineを注射して胸線を標識し,これを正常仔の胸腺と相互に移しかえて,胸腺と末梢リンパ臓器の間に細胞移行の有無をオートラジオグラフィで検討した.実験結果並に考按:(1) IgM抗体産生細胞は,若年期群,成熟群ともに,扁桃,脾,リンパ節のいずれについても,全例に証明された.(2) IgG抗体産生細胞は,扁桃,リソパ節には,証明出来ない例もあるが,脾では全例に認められた.(3) 若年期では,IgG抗体産生細胞は証明出来ない例が多かつた.(4) 3H標識胸線細胞は,扁桃,脾,リソパ節に移行するが,腹腔内に3H-Thymidineを注射した家兎に移植された胸腺には,3H標識細胞の移行は認められなかつた.IgG抗体産生細胞の認明が出来ない例があつたのは,感作方法が静注であること,幼若家兎では,感作回数をふやすと,生下時胸腺摘出による免疫不全から死亡する例が多かつたことなどが,原因と考えられる.扁桃には,IgM,IgG抗体産生細胞が存在することや,抗原に対する反応の仕方が類似していることなど,脾,リンパ節との近似性が考えられる.扁桃と脾,リンパ節間にみられる多少の差は,解剖学的な位置の差,すなわち,外界と直接,接しているか否かによるものと推定し,扁桃は局所免疫能を有する末梢性リンパ臓器と位置づけをした.
- 社団法人 日本耳鼻咽喉科学会の論文
著者
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鈴木 昌也
新潟大学医学部耳鼻咽喉科教室
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今井 昭雄
新潟大学医学部耳鼻咽喉科教室
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小島 健二
新潟大学医学部耳鼻咽喉科教室
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北見 治
済生会新潟総合病院耳鼻咽喉科
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鈴木 昌也
新潟大学医学部耳鼻咽喉科学教室
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今井 昭雄
新潟大学医学部耳鼻咽喉科学教室
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