トリトカリン(TRQ)による肝線維化亢進の抑制作用
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概要
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TRQの肝線維化亢進時に対する作用を調べるためにラットにCCl<SUB>4</SUB>を連続投与して(CCl<SUB>4</SUB> 0.5ml/kg, s.c., 2回/週)肝硬変を誘発させた.CCl<SUB>4</SUB>処置開始後12週間でラット肝臓中のハイドロキシプロリンは増加を始め第14週では対照群の1.9倍になった.肝臓中ヒスタミンも14週目では2倍に増加した.肝臓切片を光顕下で調べると肥満細胞数の増加が膠原線維増生域に観察され,両者によい相関が認められた.13週始めより2週間に亘るTRQ投与の結果,肝臓中のハイドロキシプロリンとヒスタミン量はCCl<SUB>4</SUB>処置対照群に比べ有意に且つ,投与量依存的に抑制された.組織病理学的観察によれぽ,膠原線維の増生と肥満細胞数の増加も又TRQの投与量に依存して抑制されていた.又肝臓中の肥満細胞数の減少がハイドロキシプロリンおよびヒスタミン量の減少に統計学的に有意に相関していることが確認され,肥満細胞が膠原線維の生合成に関与していることが示唆された.TRQ投与群では血清トランスアミナーゼ値の改善や,アルカリホスファターゼおよびロイシンアミノペプチダーゼ値の上昇の抑制も著明に観察されたが,血清総コレステロール値の改善作用は弱かった.この結果より,TRQはラット肝線維化の進行を強く且つ特異的に抑制することが分った.この線維化抑制の薬理作用の1つとしてTRQの有する肥満細胞の刺激に対する反応の抑制作用が関与している可能性が考えられた.
著者
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梅津 浩平
三菱化成工業株式会社中央研究所
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湯浅 聡
三菱化成工業(株)総合研究所生化研究所
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須藤 敦子
三菱化成工業(株)総合研究所生化研究所
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稲垣 三重子
三菱化成工業(株)総合研究所生化研究所
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梅津 浩平
三菱化成工業(株)総合研究所生化研究所
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