新しいベンゾジアゼピン系催眠薬Sch161(Quazepam)の脳波学的研究
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
新しいベンゾジアゼピン系催眠薬であるSchl61(quazepam)の脳波作用を慢性電極を植え込んだ無麻酔ラットおよびウサギを用いて,行動の観察と同時に調べ,flurazepamおよびdiazepamと比較した.quazepamは自発脳波に対してラットでは10〜30mg/kgの経口投与,ウサギでは0.5〜5mg/kgの静脈内投与により皮質および扁桃体では高電圧徐波,海馬ではθ波の脱同期化など傾眠パターンを惹起した.flurazepamおよびdiazepamもラットおよびウサギで同様な脳波の傾眠パターン化を起こしたが,その作用はdiazepamが最も強く,quazepamとflurazepamはほぼ同程度であった.quazepam投与により動物は行動上鎮静状態となり,軽度の筋弛緩が認められたが,flurazepamやdiazepamに比べて弱かった.また,quazepamはラットにおいて経口投与後の傾眠パターンの発現時間を用量依存的に短縮した.quazepamはflurazepamと同様にラットおよびウサギにおいて音刺激による脳波覚醒反応を抑制したが,中脳網様体および視床下部後部電気刺激による覚醒反応には影響を及ぼさなかった.しかし,diazepamはいずれの刺激による覚醒反応も著明に抑制した.閃光刺激によって後頭葉皮質上に誘発される光誘起反応はdiazepamおよびflurazepamにより抑制されたが,quazepamでは影響されなかった.quazepam,flurazepamおよびdiazepamのいずれも視床内側中心核の低頻度刺激による漸増反応に影響を及ぼさなかった.quazepamは海馬および扁桃体刺激による後発射を著明に抑制した.以上,quazepamは脳波の傾眠パターンを起こす点でflurazepamおよびdiazepamの作用と類似するが,脳波覚醒反応や光誘起反応に対する作用などから,Hurazepamおよびdiazepamとは質的にかなり異なった脳波作用を示す新しい睡眠誘導剤である.
著者
-
山本 隆一
宮崎医科大学薬理
-
川崎 博己
宮崎医科大学
-
大野 洋光
エスエス製薬(株)中央研究所
-
高崎 浩一朗
宮崎医科大学薬理学教室
-
占部 正信
宮崎医科大学薬理学教室
-
貫 周子
宮崎医科大学薬理学教室
-
山本 隆一
宮崎医科大学薬理学教室
-
川崎 博己
宮崎医科大学薬理学教室
関連論文
- (5)神経・内分泌系でのPTHrP
- Zingiber mioga ROSCOEの薬理学的研究 : Thiopental睡眠時間ならびに脳内自己刺激行動に及ぼす影響
- アセチルコリン誘発気道収縮における新規抗喘息薬 Flutropium bromide と Salbutamol,Aminophylline および Disodium cromoglycate の併用効果
- 新規抗喘息薬 Flutropium bromide の連続適用による気道反応性および肝薬物代謝酵素系に及ぼす影響
- 無麻酔・無拘束実験高血圧動物における,新規α1-アドレナリン受容体遮断薬,Naftopidil(KT-611)の抗高血圧作用
- 新規抗喘息薬Flutropium bromideのMediator遊離抑制作用及びMediator拮抗作用
- 血管緊張度の神経性調節におけるカルシトニン遺伝子関連ペプチドの役割 : 第57回日本循環器学会学術集会 : 循環調節機構:中枢と末梢の役割
- 新規抗うつ薬Milnacipran hydrochloride(TN-912)の脳波および循環器に対する作用
- 新しいベンゾジアゼピン系催眠薬Sch161(Quazepam)の脳波学的研究
- カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)による血管緊張調節について
- 選択的Cyclic 3,5-monophosphate phosphodiesterase 抑制薬,Rolipram(ME3167)の脳波学的研究
- 新規非ベンゾジアゼピン系抗不安薬,SC-48274の脳波学的研究
- 新規非ベンゾジアゼピン系抗不安薬,Buspironeおよびその代謝物1-(2-Pyrimidinyl)piperazine(1-PP)の脳波学的研究