わが国ホルスタイン種の遺伝学的分析 : I. 主要ブリーダーおよび種牛ならびに時期別輸入牛の遺伝的寄与
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
昭和8,13,23,28および33年のホルスタイン血統登録牛から抽出された標本牝牛の血統を追跡し,標本牝牛群に対する主要ブリーダーおよび種牛,ならびに時期別輸入牛の遺伝的寄与の推定を行なつた.結果を要約すると次の通りである.昭和におけるホルスタイン種の"改良繁殖"は,昭和初期(3〜12年)の輸入種牡牛を中心として展開されたといえる.これらの輸入種牡牛の遺伝的寄与(標本牝牛の遺伝子のうち,これらに由来すると期待される部分の割合)は,標本年次が進むとともに大きく,28年および33年標本ではおおよそ33〜4%を示す.これらの輸入種牡牛の遺伝子を国内に広める上で最も大きな役割を果たしたのは,町村,小岩井,宇都宮,明治(極東)などの民間ブリーダーと,農林省機関ならびに沼津種畜であつた.33年標本では,標本牝牛の遺伝子のほぼ56%が,これら6者の生産種牛に由来する.ただし,これらのブリーダーの機能は,改良繁殖というよりは,輸入種牡牛のmultiplication(増殖)という性格が濃い.各標本年次の標本牝牛に対する個体別の遺伝的寄与では,比較的高い値を示した個体の大部分は,やはり輸入種牡牛であるが,最高の寄与を示した場合でもせいぜい3%程度の寄与に過ぎず,品種全体に圧倒的影響を及ぼした個体はなかつたことが知られる.ブリーダーの寄与が比較的少数者に集中しているのと対照的に,輸入種牡牛個々の寄与の値が著しく分散しているのは,輸入種牡牛の数が多かつたことと,ブリーダーとして寄与の大きかつたブリーダーにおいては,2〜3頭以上の輸入種牡牛がおおむね同時に基幹種牡牛として用いられるのが通例であり,牛群全体を挙げて1頭の特定種牡牛を中心とする系統繁殖が行なわれるというようなことはほとんどなかつたことによろう.戦後の輸入種牡牛の遺伝的寄与は,33年標本でもなお10%程度であるが,今後急速に拡大するものと思われる.
- 社団法人 日本畜産学会の論文
著者
関連論文
- わが国ホルスタイン種の遺伝学的分析 : II. 近親交配および血縁関係
- わが国ホルスタイン種の遺伝学的分析 : I. 主要ブリーダーおよび種牛ならびに時期別輸入牛の遺伝的寄与
- 北海道高等登録牝牛の泌乳量の地区(市町村)間変異における遺伝と環境の相対的重要性
- 北海道高等登録牛の昭和23〜33年における泌乳量および乳脂率のすう勢に対する遺伝的ならびに環境的諸要因の寄与
- ホルスタイン牛の泌乳3形質のヘリタビリテイおよび表型ならびに遺伝相関について