わが国ホルスタイン種の遺伝学的分析 : II. 近親交配および血縁関係
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概要
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昭和8,13,18,23,28および33年のホルスタイン血統登録牝牛から抽出された標本牛の血統により,主として平均近交係数および平均血縁係数の変化とその原因について考察した.昭和13年以降,平均近交係数のうちcurrent inbreedingによる部分は急速な低下を示すが,long-term inbreedingによる部分は,通常予想されるように,平均血縁係数とともに,年次の進行に伴つて上昇を示す.ただ,平均近交係数(long-term inbreedingによる部分だけをとる.),平均血縁係数とも,世代(平均世代間隔は約5年と推定される.)当り上昇量は,これまで外国で報告された値に比して最も低い部類に属する.とくに前者についてそうである.これは,23年頃までの上昇が鈍いためで,以後,観察期間の終り(33年)に近ずくほど,両係数の上昇は大きくなる.もし,戦後輸入牛がなかつたならば,最後5年間の上昇は,注目すべき大きさを示していたであろう.観察期間を通じて,平均血縁係数の方が,平均近交係数より相対的に急速な上昇をみせる.このことは,集団内の分化が失なわれ,全体としての均質化が進んだことを意味する.戦後間もなくの頃まで,地方による遺伝的差異を減少する主因となつたのは,種牛,とくに種牡牛の移動であつたが,その後は,むしろ種牡牛の選抜が主な原因になつたと思われる.すなわち,人工授精の普及に伴なう種牡牛数の減少は,当然に種牡牛の選抜を強めたが,それが,特定の種牡牛たち(その多くが輸入)を血統にもつものの比率を全国的に増加させる傾向を生み,種牡牛同士間の,従つてまた子どもたちの平均血縁係数を上昇させたことによる.人工授精の普及は,各都道府県において,繁殖単位の拡大をもたらしたが,その拡大は,殆んどの場合,県境の内側に止まり,従つて,交配に関する限り,全国乳牛集団は,なお閉鎖性の強い数多くの副次集団を抱える状態にありながら,一方で,上記の,全国的に共通な方向への種牡牛の選抜が,地方的分化の解消を進める働きをした点に,戦後10余年のわが国ホルスタイン牛集団の特徴がみられる.
- 社団法人 日本畜産学会の論文
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