ラット胎児に対する蛋白質の利用率

概要

論文の詳細を見る
受胎生産物(胎児,胎盤,羊水および子宮)の生産に要する蛋白質量を算出するために,受胎生産物へのN蓄積に対する蛋白質の利用率について検討を加えた.この利用率は,受胎生産物へのN蓄積量のN摂取量,可消化N(DN)摂取量および真の吸収N(NAN)量に対する直線回帰式の回帰係数(直線の傾き)から算出した.受胎生産物へのN蓄積に対するN,DNおよびNANの利用率は,妊娠中期(妊娠8〜14日)では,0〜4%とゼロに近い値を示し,供試蛋白質源(カゼイン,大豆粕,魚粉とこれらの等量混合物,およびカゼインにメチオニンを添加したもの)が異なっても利用率間に有意差は認められなかった(P>0.05).一方,妊娠後期(妊娠15〜20日)では,その利用率は約20〜35%中期に比べて高い値を示した.Nの利用率については,大豆粕区で低く,魚粉区で高くなり,その差は有意であった(P>0.05).しかし,他の区におけるN,DNおよびNANの利用率間には,有意差は認められなかった.次に,蛋白質源としてカゼインにメチオニンを添加した場合について,妊娠前期,中期および後期におけるNとDNの最小要求量(維持と受胎生産物の生産分)を算出した.その結果,妊娠前期と中期では,維持量が最小要求量となったが,後期では維持のNまたはDN量に対して,それぞれ約15倍または約20倍にも高める必要のあることが認められた.次に,本実験で算出した妊娠に要する最小蛋白質量と,著者ら5-11)がこれまでに算出した妊娠時の代謝エネルギーの最小要求量に見合う蛋白質とエネルギー量を摂取させた場合,母体における増体量と養分の蓄積量は,ゼロに近いことを確かめた.この結果から,これまでに算出してきた妊娠時の蛋白質およびエネルギーの最小要求量の値には大きな誤りはないことが推測された.
社団法人日本畜産学会の論文

ラット胎児に対する蛋白質の利用率

スポンサーリンク

概要

著者

関連論文

スポンサーリンク