日本の生産農場における未経産豚と経産豚の安楽死
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
動物福祉の観点から,欧米では,病気や外傷などの問題があった繁殖雌豚に対して安楽死が実行されている。しかし,国内の生産農場における安楽死の現状については報告されていない。本研究の目的は,日本の生産農場における雌豚の安楽死率と安楽死リスクの測定,安楽死された雌豚とその他の雌豚における分娩後の週毎の雌豚割合の比較とした。本研究では,101農場における2001年から2004年に出生した62,742頭の雌豚の生涯記録を用いた。101農場のうち,25農場(24.8%)が安楽死を行っていた。この25農場において,安楽死雌豚の農場平均割合(±標準誤差)は1.27±0.38%であり,幅は0.06%から8.44%であった。この25農場における21,094頭の雌豚では,安楽死,死亡,淘汰雌豚の割合は,それぞれ1.7%,9.7%,88.6%であった。安楽死雌豚の平均淘汰産次と生涯生存日数は3.3±0.13産,717.2±18.58日であった。年間安楽死率は0.63%であった。安楽死雌豚348頭のうち,53.7%が起立不能,25.0%が四肢障害という理由によって安楽死されていた。安楽死雌豚は,淘汰雌豚よりも淘汰産次が低く,生涯生存日数が短かったが(P<0.05),死亡雌豚とは差がみられなかった。産次0, 1,2の安楽死リスクは,それぞれ0.23%,0.27%,0.23%であった。また,産次が3産から6産に上がるにつれて,安楽死リスクは0.22%から0.59%に上がった。分娩後0, 1,2週における雌豚割合は,安楽死雌豚が2.7%,21.6%,8.4%,死亡雌豚が9.8%,24.1%,11.1%,淘汰雌豚が0.1%,1.3%,2.6%であった。結論として,国内生産農場では繁殖雌豚への安楽死はあまり実施されていなかった。安楽死雌豚の淘汰パターンは死亡雌豚と同様であった。動物福祉の観点から,歩行困難等を示す雌豚は,死亡を待つのでなく,安楽死させることが望ましい。
著者
関連論文
- 一腹離乳母豚とナース後離乳後母豚における唾液中プロジェステロンおよび背脂肪厚と繁殖成績の関連性
- 農学部学生における食品に対する安全・安心意識の現状と動物教育ファームでの教育活動による変化
- 国内農場における繁殖雌豚への2回交配と3回交配の経済的利益の比較
- ポイントサンプリング法を用いた生産農場における妊娠末期豚と授乳豚の行動比較
- 繁殖成績レベルが異なる農場における3ヵ月ごとの離乳後6日以内交配母豚割合
- 妊娠末期豚における蹄損傷と繁殖成績、淘汰リスク及び姿勢行動との関連性
- ストール飼育雌豚における四肢の肢勢スコアと生存時間,背脂肪厚及び行動との関連性
- 繁殖母豚の毛根の付いた体毛からのDNAの抽出法と遺伝子多型の検出法の開発
- 生産性の異なる農場グループにおける繁殖雌豚の低生涯成績と淘汰理由
- 授乳豚と妊娠末期豚における四肢の蹄の観察
- 妊娠末期豚と授乳豚の姿勢と常同行動と繁殖成績との関連性
- 国内生産農場における繁殖雌豚の死亡の発生パターン
- ストール飼育妊娠豚における行動と生涯繁殖成績および唾液中コルチゾールの関連性に関する野外研究
- 日本の生産農場における未経産豚と経産豚の安楽死
- 繁殖雌豚群の繁殖効率に関係する群レベルマネジメント因子
- 国内農場における繁殖雌豚への2回交配と3回交配の経済的利益の比較
- ストール飼育雌豚における四肢の肢勢スコアと生存時間,背脂肪厚及び行動との関連性
- 大規模生産農場における分娩クレート飼育雌豚の蹄損傷と生存時間,リスク因子との関連性
- 潜在型の動物介在教育が都市生活を営む農学部学生の農業動物への認識と気分・整理に及ぼす影響
- 日本の生産農場における未経産豚と経産豚の安楽死
- 繁殖農場における2産次の母豚の生存産子数減少の要因
- 国内養豚農場における繁殖雌豚の死亡率の5年間の傾向(臨床繁殖学)
- 国内一貫経営農場における肥育豚の死亡の傾向と死亡リスク割合と死亡率の比較
- 農業動物におけるベンチマーキング--コンセプトと応用
- 授乳豚の犬座姿勢と長期生存性および生涯繁殖成績の関連性
- 和文要約 農業動物におけるベンチマーキング--コンセプトと応用
- 生産農場で飼育されている授乳母豚の行動と繁殖成績の関係(臨床繁殖学)
- 繁殖雌豚群の長期生存性と群レベルマネジメント因子
- 疫学的アプローチ : 国内企業養豚における財務諸表を利用した経営ベンチマーキング
- 養豚生産農場における離乳後繁殖成績を改善するための授乳期成績(臨床繁殖学)
- 豚の全身性Actinobacillus suis感染症 (日本獣医師会学会学術誌) -- (産業動物臨床・家畜衛生関連部門)
- 国内生産農場の繁殖雌豚における種付け回数および再種付け間隔と繁殖成績の関連性
- 養豚一貫経営農場における繁殖成績と肥育成績の調査
- 大規模生産農場における分娩クレート飼育雌豚の蹄損傷と生存時間,リスク因子との関連性
- 日本の生産農場における未経産豚と経産豚の安楽死
- 養豚教育ファームでの活動が都市生活を営む農学部学生の心理・生理と養豚への理解に及ぼす影響
- 国内企業養豚における財務諸表を用いた経営の収益性・安全性・生産性指標分析
- 産業動物獣医療に必要な生産システムの考え方
- 英国産バークシャー種農場における繁殖生産性と母豚の行動
- 国内繁殖群農場における離乳前子豚死亡率と死亡理由および死亡の関連因子(臨床繁殖学)
- 農業動物の福祉そして動物介在教育の研究における疫学の役割
- 国内繁殖豚群農場における哺乳中死亡率の記述疫学と他の生産指標との相関
- 豚の全身性 Actinobacillus suis 感染症
- 海外技術紹介 養豚農場での安楽死 : 米国ポーク生産者協議会による生産者のための推奨
- 国内生産農場における淘汰産次毎の母豚の生涯経済性の調査
- 一般農場における生産データ活用の動物生産研究・教育のための基礎と応用 : ミネソタ大学養豚生産プログラム(ピッグチャンプ)を参考にして
- 日本における繁殖雌豚群の非生産日数に関係する群レベルマネジメント関連因子
- 国内養豚105農場における繁殖雌豚の淘汰・死亡率の記述疫学
- 動物における生産疫学の技術 : 研究デザイン
- 微力ながら
- 生産性向上のための繁殖雌豚群マネジメント
- 養豚生産者の経営に関する意識と優先順位の調査
- 繁殖疫学の基礎と応用 : 養豚を例として
- 国内養豚農場における繁殖生産性の測定と分析
- 国内生産農場における人工授精と自然交配による繁殖成績の比較
- 繁殖農場における低生涯生産性を示す母豚に関連する要因
- 生産農場における妊娠豚への分娩誘発剤の使用とその繁殖成績
- すのこ床の間隙方向と妊娠豚における蹄損傷,繁殖成績,行動との関連性
- 高・中・低生産性農場における四つに細分化した母豚の生涯非生産日数と生涯繁殖成績との関連性
- Low Lifetime Efficiency Sows in Low Parity were Culled Due to Reproductive Failure in Commercial Herds
- Assessment of Lifetime Economic Returns of Sows by Parity of Culled Sows in Commercial Breeding Herds
- Effects of the Environmental Improvements and Probiotic Supplement on Productivities of Weaned Pigs
- Quantitative Associations between High Temperature, Humidity and Reproductive Performance of Sows during Summer in Japanese Commercial Breeding Herds
- Increased Number of Pigs Weaned from Pigs Born Alive of Sows and Subsequent Reproductive Performance in Japanese Commercial Breeding Herds
- 分娩前後の乳牛のリポタンパク質中のコレステロール値とトリグリセリド値のプロファイル
- 日本の養豚農場における分娩時生存産子数より増加した離乳時子豚数が初産豚の次産次繁殖成績へ及ぼす影響
- 犬のアトピー性皮膚炎の発症年齢と臨床症状
- 養豚教育ファームでの活動が都市生活を営む農学部学生の心理・生理と養豚への理解に及ぼす影響