海洋環境より分離した糸状菌培養上清の生鮮食材変色防止効果
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
伊豆諸島の新島沖の海底堆積物中から分離されたTrichoderma sp. が有するチロシナーゼ活性阻害作用について,酵素学的および応用レベルから調べた.本菌はその分類学的性状からTrichoderma属の糸状菌と同定された.本研究ではこの糸状菌を2%グルコースおよび0.5%ペプトンを添加した培地中で4日間培養(27℃,回転振とう培養160rpm)した後,遠心分離を行い,その上清を実験に供した.本菌の培養上清は,キノンオキシダーゼの一種であるチロシナーゼの活性を添加濃度依存的に阻害した.本菌培養上清を−20℃および−80℃の条件下で保存しても,阻害活性は50日間以上の長期に渡り安定であった.また本菌培養上清を100℃,30分間の加熱処理した結果,チロシナーゼに対する阻害活性は約50%まで低下したが,プロテアーゼの一種であるパパイン処理では阻害活性は90%以上残存していた.これらの結果から,本菌の培養上清は生鮮食材の鮮度保持に十分応用可能であると考えられた.そこで養殖ものの活クルマエビに対する培養上清の黒変防止効果を調べた結果,0.2%の培養上清添加により,顕著な黒変防止効果が確認された.また野菜や果物に対する影響を調べるために,リンゴ,ナスおよびマッシュルームを取り上げ,これらの変色防止効果について検討したところ,培養上清の50%希釈溶液は,これらの変色を70%以上抑制することが判明した.これらの知見から,本菌の培養上清は,生鮮食材の新しい鮮度保持剤として応用が可能であることが示唆された.
- 社団法人 日本食品科学工学会の論文
著者
-
小林 武志
東京海洋大院海洋生命
-
山田 勝久
国立大学法人東京海洋大学大学院海洋科学技術研究科応用微生物学講座
-
今田 千秋
国立大学法人東京海洋大学大学院海洋科学技術研究科応用微生物学講座
-
小林 武志
国立大学法人東京海洋大学大学院海洋科学技術研究科応用微生物学講座
-
濱田(佐藤) 奈保子
国立大学法人東京海洋大学大学院海洋科学技術研究科応用微生物学講座
-
今田 千秋
東京海洋大院海洋生命
関連論文
- 相模湾および遠州灘の海底堆積物から分離した好圧細菌の諸性状について
- P-52 日本海上越沖におけるメタン生成菌とメタン酸化菌の分離に関する予備研究(ポスター発表)
- 日本海東縁,上越海盆の高メタンフラックス域におけるメタンハイドレートの成長と崩壊
- 魚の鮮度保持に及ぼす脱水シートの効果 : タラとタイの比較
- 02-028 海水中のDNAのプロトプラスト化した大腸菌への水平伝播(遺伝子伝播,研究発表)
- 海洋性発光細菌Shewanella sp.のVBNC状態への誘導および大腸菌とのプロトプラスト融合(短報)
- PB-60 海洋性発光細菌Shewanella woodyiのVBNC状態の誘導及びその応用(極限環境,ポスターセッションB,ポスター発表)
- PB-02 発光細菌と大腸菌のプロトプラスト融合で得られた融合株の発光遺伝子の検出(遺伝子伝播,ポスターセッションB,(1)ポスター発表会,研究発表会)
- 海洋細菌と大腸菌の細胞融合および得られた融合株の性状(短報)
- B-07 海洋細菌と大腸菌の細胞融合および得られた融合株の諸性状(遺伝子伝播,口頭発表)
- 海水中における生分解性プラスチックの分解
- P-6 日本沿岸海水中における放線菌の群集組成解析(ポスター発表)
- 脱水シート包装による鮮魚の鮮度保持 : サバとイワシの鮮度保持効果
- 06-110 海洋環境からの放線菌の選択分離(水圏生態系,研究発表)
- エチレンジアミン四酢酸鉄キレート(Fe-EDTA)の海洋細菌による分解
- 無機培地中におけるフグ毒テトロドトキシンの減毒
- 1D-11 海藻多糖分解菌との混合培養における海洋乳酸菌の発酵能(口頭発表)
- 3-14 海洋由来の糸状菌H1-7株が生産するチロシナーゼインヒビターの培養条件の検討(水圏生態系,口頭発表)
- 海洋環境より分離した糸状菌培養上清の生鮮食材変色防止効果
- B-24 PCR-DGGE法を用いた河川水及び海水中に存在する放線菌微生物群集解析(群集構造解析,口頭発表)
- 無機培地中におけるフグ毒テトロドトキシンの減毒
- 魚の鮮度保持に及ぼす脱水シートの効果 : タラとタイの比較