千葉県銚子産メロンのライフサイクルCO₂の試算(その2)
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概要
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千葉県銚子市で栽培された標準的なメロンのLC-CO₂を再計算した。本研究での算定範囲、機能単位等は、基本的に安藤(2011b)「千葉県銚子産メロンのライフサイクルCO₂の試算」と同様としたが、①原料調達段階に「播種・育苗工程」を加え、②「圃場準備工程」に日常の農作業に伴う農家からハウスまでの移動に伴う環境負荷(2台の軽トラックの排出CO₂ 量)を計上し、③廃棄・リサイクル段階にハウス準備工程で1シーズンあたりに廃棄されるフィルム、シート、段ボール、パルプモールド等の環境負荷を計上し、④食品残渣量の見積もりの変更等を行った。 銚子産メロンのLC-CO₂の試算結果は、650.2g-CO₂/kgとなった。段階毎の内訳は、原料調達段階で410.6g-CO₂/kg(構成比63.2%)、生産段階で145.0g-CO₂/kg(22.3%)、流通・販売段階で65.1g-CO₂/kg(10.0%)、使用・維持管理段階で2.8 g-CO₂/kg(0.4%)、廃棄・リサイクル段階で26.7g-CO₂/kg(4.1%)となり、原料調達段階からのCO₂排出割合が最も多いことが明らかとなった。この中で、複数年使用するハウス製造由来と育苗トンネル由来の資材に由来するCO₂ 排出量は、ハウス圃場10aあたり、1シーズン(半年)あたり、585.6kg-CO₂となった。この値は、他のハウス野菜についてのLC-CO₂ の試算にも適用可能である。 栽培方法の違いでは、露地栽培と比較した場合、ハウス栽培では、2割強高いLC-CO₂となった。このため、ハウス設備をできるだけ長期間使用することや、交換したハウスパイプ等の資材を積極的にリサイクルするなどして、CO₂排出量の削減を心がけるべきである。また、加温栽培されたメロンでは、加温しない銚子産メロンの約7.9 倍のLC-CO₂ となった。この結果は、加温しない銚子地域のメロン栽培が、気候、風土等の地域特性を活かした適地適作の栽培であり、環境負荷も小さいことを示している。 輸送距離と輸送方法の違いでは、600km程度の長距離輸送を想定した場合、トラック輸送が鉄道輸送に比較して1割程度高いCO₂ 排出量となった。しかし、鮮度が重要な商品の輸送方法を選択する場合には、CO₂排出量以外にも、積み荷の積み替え等の作業に伴う余分なエネルギーの使用や、作業性、輸送時間等を総合的に判断する必要がある。This study estimates the Life cycle CO₂ (LC-CO₂) of melon (variety: Ams melon) growing in greenhouse produced in Choshi area, Chiba Prefecture. The functional unit is adopted to express "carbon footprint, denoted as CFP" per emission per kilogram of melon. The system boundary of melon is classified into five stages, some of which is further divided, and finally eight processes, and LC-CO₂ is calculated as the total amount of CO₂eq emitted from each process. This estimated result compares with those of growing in warming greenhouse by fossil fuel in Kumamoto Prefecture, and discusses the cause of the difference between them. In addition, the effects of changing the transportation method and distance on total LC-CO₂ are considered from the viewpoint of the reduction of environmental burden. The estimated result of LC-CO₂ of melon produced in Choshi area was 650.2 g-CO₂eq/ kg.Followings are the results obtained for the five lifecycle stages: the raw materials procurement stage: 410.6 g-CO₂eq (component ratio: 63.2%), the production stage: 145.0 g-CO₂eq (22.3%), the distribution and selling stage: 65.1 g-CO₂eq (10.0%), the operation and maintenance stage: 2.8g-CO₂eq (0.4%), and the disposal and recycling stage: 26.7 g-CO₂eq (4.1%). Most of the CO₂ is emitted from the facility building process in the raw materials procurement stage, especially from the multi-year used material,e.g. house pile and plastic sheet, which accounts for 37.3 % of the total melon LC-CO₂. Comparing the LC-CO₂ of melon growing in non-warming greenhouse in Choshi area to that of warming greenhouse in Kumamoto Prefecture, the later accounts for almost 8 times over for the burning fossil fuel. Therefore, it is clear that the non-warming production system in Choshi area is environmentally - friendly agricultural systems. In addition, it is clear that the over 600km transportation, truck transport accounts for only 10 % over than rail transport of the total melon LC-CO₂. Thus the change of transportation method should not widely contribute the reduction of environmental burden.
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