保育所での活動間移行過程における子どもたちによる呼びかけ行動の分析
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概要
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一般的に、子どもが保育所のような新しい生活環境に参入する過程は、その場でふさわしいとされる慣習の内面化として記述されてきた。本稿では、その参入過程について、保育者の設定した生活環境を利用して子ども自身が新しい活動を即興的に創造する側面に注目した分析を実施した。ある公立保育所の年少児(3~4歳)クラス1つを観察対象とし、入所直後の4月から6月にかけて、月に1度の「お誕生会」が開始されるまでの子どもたちの行動を検討した。その結果、自由遊びからの活動移行場面において、お誕生会の準備に不要な行動が多数観察された。その中の1つが、保育室に用意されたイスに着席した子ども同士が手を振ったり名前を呼んだりする「呼びかけ」行動である。呼びかけ行動が生起した状況を詳細に分析した結果、着席によって身体が固定された状態を利用して子どもが発見し、それが他の子どもにも伝播し、3か月の間で子どもたちの中に共有された行動パターンであったことが明らかになった。考察では、保育実践上の計画的要素が条件となって新しい活動が創造されうること、この活動は結果的に円滑な活動移行に寄与していた可能性があること、参入過程について慣習の内面化として記述するだけでなく、新しい活動の即興的創造という観点から記述することの重要性が示唆された。
- 2014-03-25
著者
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