寒冷地向け菓子用小麦新品種「ゆきはるか」の育成
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概要
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「ゆきはるか」は穂数が多く多収で、スポンジケーキ適性の優れた簿力小麦である。1997年5月に麺用小麦の「東山30号(後のキヌヒメ)」と「関東117号(後のきぬあずま)」との人工交配を行い、派生系統育種法で選抜・固定をはかり、2010年8月に育成を完了し、2011年1月に品種登録申請を行った。播性はIV、出穂期および成熟期は寒冷地の基準で"やや早"であり、寒冷地で薄力粉の原料として使用されている「キタカミコムギ」より出穂期は6~8日早く、成熟期は4~6日早い。叢生は中程度で株は開き、葉色はやや淡い。稈長が90cmの中稈種で「キタカミコムギ」より短く、穂型は紡錘状、白ふ、有芒で穂長はやや短い。子実重は「キタカミコムギ」より約10%多く、千粒重は「キタカミコムギ」と同じ中程度、容積重も中程度であるが「キタカミコムギ」より小さい。子実の形、大きさとも中程度の赤粒種で、外観品質は"中の上"である。粒質は粉状質で製粉歩留はやや低い。蛋白質含量は原麦、60%粉共に"やや少"で「キタカミコムギ」と同程度で、灰分含量は原麦、60%粉共に"やや少"で「キタカミコムギ」より少ない。粉の明度は「キタカミコムギ」と同程度で、赤み、黄色みは少ない。アミログラムの最高粘度が大きく、ブレークダウンは中程度である。ファリノグラムのバロリメーター・バリューは"低"で、エキステンソグラムの生地の力の程度は"やや小"、伸張抵抗は"やや弱"でいずれも「キタカミコムギ」より数値が小さく、薄力的な特性を示す。スポンジケーキの容積は「キタカミコムギ」より大きく、官能評価の点数も高い。耐寒性は"やや強"だが、耐雪性は「キタカミコムギ」と同じく"やや弱"である。耐倒伏性は"やや強"で、穂発芽性は"やや難"である。縞萎縮病、うどんこ病および赤さび病の各抵抗性は"やや強"で、赤かび病抵抗性は"中"である。栽培適地は東北・北陸地域の根雪期間80日以下の平坦部で、菓子原料としての普及が期待される。
- 2012-03-00
著者
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八田 浩一
東北農業試験場
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伊藤 裕之
東北農業研究センター
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八田 浩一
(独)農業・生物系特定産業技術研究機構九州沖縄農業研究センター
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八田 浩一
九州沖縄農研
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八田 浩一
農業・食品産業技術総合研究機構 九州沖縄農業研究センター
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谷口 義則
(独)農研機構東北農業研究センター
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八田 浩一
九沖農研
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