都道府県間人口移動パターンの推移について
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概要
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戦後の国内人口移動の動向については、1960年代までの大都市圏集中から、1970年代以降の地方分散傾向への転換ということが、諸研究者が一致して指摘するところである(転換期の画定に前後はあるが)。ところが、1980年代もしばらくすると、1985年の国勢調査で1980年からの5年間に、東京都は全国で5番目に多い20万人以上の人口増加を示した一方で、秋田県が減少に転じたことが明らかになり、東京都だけが人口減少を記録した前5年(1975~80年)とは様相を一変させた。そして、これをきっかけにして大都市への再集中が指摘されるようになり、地方圏の人口減少の問題が深刻化して、ひところはやった「地方の時代」のことばもすっかり過去のものとなってしまった。この最近の大都市再集中の問題は経済関係の分野でおもにとりあげられることが多く、空間現象としての分析はあまり行われていない。本稿では、人口増減の空間分布にとどまらず、地域間人口移動の移動流(movement)そのものの空間パターンを明らかにするため、都道府県間人口移動のO(発地)D(着地)行列の分析を行って、1960年代以降の人口移動の複雑な動向の解明を目指す。方法としては、後述のような47×47=2,209(または46×46=2,116)の多数のODの組み合わせ全部から、全体を規定するいくつかのグループを抽出して、複雑な日本全体の移動流を要約することのできる、因子分析法を採用する。関連の研究としては、斎野岳廊・東賢次2)、斎野岳廊3)がある。前者は1960年代、後者は1970年代のそれぞれの都道府県間人口移動のOD行列に対して、主成分型因子分析を行っている。それらの結果として、2大人口移動パターンである東京都を中心とする「東日本圏」と大阪府を中心とする「西日本圏」をはじめ、上位の移動圏は、「西日本圏」の弱体化がやや見られるものの、全般的には各時期を通して安定していることを指摘している。本稿では、後述のような新しい分析方法を取り入れたうえで、問題の1980年代を含めた検討を行う。
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