富有柿のガス貯蔵に関する研究(第1報)
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概要
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1)1952年11月1日に富有柿を12.8l容真空デシケーターに5.8kgつめた(III区A)果実の呼吸作用によつて12月1日に88.3%の炭酸ガスが容器内に集積したので12月6日サッカーにて容器内の炭酸ガスを半減して大気を導入し43.6%の炭酸ガス濃度とした(第1表参照)同様にI区及びII区は11月13日に容器内の炭酸ガス濃度を同様な方法にて20又は30%に下げ酸素を含まない空気を器内に導入した.又11月21日に再び容器内の炭酸ガス濃度を低下させたが,此の場合は大気を容器内に導入した. 2)12月15日開封直後における硬度(10mm検定針)はI区5.7 II区8.5及び III区9.2で,室内に10日間放置後の硬度はI区は2.4となつたがII区及びIII区は貯蔵前の硬度(8.5)と余り差はなかつた. 3)異なつた果樹園で生産された柿を8斗入貯米缶(54.5×59.0cm)に詰め,取出口(21.0×6.0cm及び10.5×3.5cm)を紙で張つて密封したが炭酸ガス濃度が35%又はそれ以下であつたので貯蔵に失敗した.果実の呼吸作用によつて集積される炭酸ガス濃度は約40%以上であり又70~80%を越えない様にすれば貯蔵に成功するものと思はれる.又容器内のガス組成を変化せしめることは有害であるがこれは果実の呼吸作用に異常を与える為と思はれる. 4)開封後の果実の色相及糖度は貯蔵前と差がなかつた.適当に貯蔵された柿は酪酸の如き揮発性物質の臭気により風味を害せられることがない.開封後の果実の果皮直下(約1cm厚さ)の硬度はそれより内部の硬度よりも大で,大気中に室温に置いていても日持ちが良い. 5)唯一の貯蔵障害である頂部褐変現象(直径約2.0~3.0cm深さ約1.0cmの円形褐色)は貯蔵開始後2~4週間の間に現はれる.頂部褐変果発生率は所謂"遅延貯蔵"により僅に8%に低下した.頂部褐変果の市場価値は正常果のそれに比して僅かに低い程度である. 6)異つた果樹園で生産された柿の貯蔵力は非常な差が見られた.果実の呼吸作用に関連しての燐酸の重要性について若干の考察を加えた。
- 岡山大学農学部の論文
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