公共図書館におけるレファレンス・サービスの質の評価
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
原著論文【目的】 レファレンス・サービスは, 量だけでなく質を評価すべきであるが, これまで質の評価に関する有効な手法は確立されていない。 本稿では, 評価対象となる公共図書館が組織として提供するレファレンス・サービスの質を評価する方法を提案する。【方法】 レファレンス・サービスの質を評価するための有効な方法が確立されていないため, 図書館・情報学以外のサービスの品質評価の方法を調査した。 社会福祉, 医療, 教育などの評価を中心に, 品質評価手法に関する文献調査をした結果, 多くの評価法に共通点があることが分かった。 第1に, 分野は違ってもサービスの品質を「次元」「体系」等の概念で切り分け, その下位尺度となる質問項目により測定していること, 第2に利用者やサービスの提供者, 第三者などが評価する質問紙調査形式だということである。 レファレンス・サービスの質も, 次元により構成されていると考え, その下位尺度により測定する質問紙調査形式の手法を開発した。【成果】 レファレンス・サービスの質を測定するために, 他分野のサービス品質評価の方法にならった質問紙調査形式のツールを開発した。 最初にフォ カス・グループ・インタビューを行い, 61の質問項目候補を得た。 精査した37質問項目を用いて, レファレンス・サービスについて熟知しているベテラン図書館員に対して質問紙調査を行い, その結果データを使って因子分析を行った。 その結果, 「職員やレファレンス資料」「質問者との相互作用」「レファレンス・サービスへのアクセス」「高度なレファレンス質問への対応」「レファレンス回答」の5次元とその下位尺度である21の質問項目が導き出された。 この21の質問項目によりレファレンス・サービスの質を評価するツールは, これまであまり試みられなかったレファレンス・サービスの質の評価に関する研究の端緒となると考えている。Purpose: There are currently no effective methods for evaluating the quality of reference services despite the knowledge that reference services need to be evaluated for both quantity and quality. This paper proposes a method for evaluating the quality of reference services provided by public libraries.Methods: Since there are no effective evaluation methods in the field of library and information science, studies of service quality in other areas, including social welfare, medicine, and education, were reviewed to identify potential methods. As a result of the reviews, two common factors were found. One is that most of the evaluation methods have a hierarchical structure. These methods consist of classifying several questionnaire items into categories, or "dimensions". The other common point is that most of the methods involve questionnaires being answered by customers, service providers, and third parties. Based on these two findings,it is proposed that a questionnaire can be used as an evaluation method for measuring quality of reference services.Results: An evaluation tool for measuring quality of reference services was developed by referring to evaluation methods in other service areas. First, a focus group interview was conducted to select questionnaire items. The questionnaire, including the selected items, was then given to librarians. The "dimensions" and their related items were identified by factor analysis using the responses from the questionnaire. The measurement tool for evaluating the quality of reference services was developed using the dimensions combined with the questionnaire items.This paper can be the first step towards further studies on the evaluation of the quality of reference services which has not been discussed to date.
- 三田図書館・情報学会の論文
著者
関連論文
- 横浜アメリカ文化センター所蔵資料と設置者の意図
- 図書館を計画する, 小川俊彦著, 東京, 勁草書房発行, 2010年2月20日, A5, 9, 202, 7p., ISBN978-4-326-09835-4, 定価:2,300円(本体価格)
- 質の高いレファレンス・サービスの概念--図書館職員と非営利分野のヒューマンサービス従事者へのインタビュー調査を基に
- 図書館員の研修とキャリアパス : 公共図書館を中心に(図書館員に求められる資質とキャリア形成)
- 神奈川県立図書館における自己評価
- レファレンス・サービスの評価の枠組みとレファレンス・サービスの質の評価法
- アメリカ文化センター設置のねらい--神奈川県立図書館所蔵アメリカ文化センター資料の分析を通して
- 公共図書館におけるレファレンス・サービスの質の評価
- 神奈川県立図書館の自己評価 (平成19年度関東地区公共図書館協議会研究集会報告書) -- (都県立図書館運営研究会)
- レファレンス・サービスの品質評価の枠組みと評価法--公共図書館を中心に
- 神奈川県図書館協会図書館評価特別委員会の取り組み (特集 図書館評価を活かす)
- 物言わぬパートナー:公共図書館におけるスモール・ビジネス,起業家向けサービス--北米の公共図書館におけるビジネス支援サービスの歴史と現状
- 図書館を利用しない人にどう働きかけるのか--神奈川県立図書館の二つの満足度調査の試み
- 司書の専門性に関する一考察
- 公共図書館におけるレファレンス・サービスの質の評価
- 海外図書館事情を探る-1-カナダ・アルバ-タ州のregional library systems