果樹園跡地における黒毛和牛の放牧行動パターンおよび血液性状に関する研究
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概要
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果樹園跡地における黒毛和牛放牧システムを確立することを目的とし,放牧牛の血液性状および体重から健康状態を調査し,さらに放牧牛の行動と植生の関係について検討を行った.かつてミカンの栽培が行われていた果樹園跡地約1.86haに黒毛和種繁殖雌牛3頭(平均87ヵ月齢,平均体重544kg)を2001年8月から放牧した.その結果,放牧開始から3日間において急激な体重の減少(27.7±7.6kg)とカテコールアミン(アドレナリン,ノルアドレナリン)の血中濃度の上昇が見られた.しかし,その後放牧牛の体重および採食時間,反芻時間は速やかに増加した.放牧牛はクズを主に採食し,その結果放牧開始53日目にはクズはほとんど見られなくなった.また,53日目の採食時間は他の調査日とは異なり,GT/RT(採食時間/反芻時間)値も他の調査日とは異なっていた.したがって,GT/RT値の変化は採食構成の変化を示す可能性が推察された.本実験において放牧牛が果樹園跡地のような新しい環境に速やかに馴致することが明らかとなった.果樹園跡地を牛肉生産の場として長期利用するためには適正な放牧圧や植生動態に及ぼす放牧牛の嗜好性の影響についての検討が必要である。The objective of this study was the establishment of the grazing system of Japanese Black Cattle in the area of abandoned groves. We investigated the body condition of cattle from blood samples, and the relationship between grazing behaviour and vegetation in the abandoned grove. In August 2001, three heads of Japanese Black Cattle aged 87 months with 544 kg in average weight were transported and introduced into the experimental site that was about 1.86 ha. There were an immediate decrease in body weight (27.7±7.6kg) and increase in the level of catecholamines (adrenaline and noradrenaline) for the first 3 days. After that, however, the body weight, the grazing and the rumination time of the cattie rapidly increased. The cattle grazed mainly kudzu, therefore on the 53rd day, the mass of kudzu markedly declined. Interestingly the grazing time on the 53rd day was different from that on the other researching days. The value of GT (grazing time)/ RT (rumination time) also showed differences between 53rd day and the other days. The change of GT/RT value may be indicative of the transition of the herbage components. It was clear that the cattle rapidly adapted to the new environment like such abandoned grove. The long time use of abandoned groves for beef cattle production requires the investigation into the proper grazing pressure and herbage preference by cattle under vegetation dynamics.
- 九州大学農学部附属農場,University Farm, Kyushu Universityの論文
- 2003-03-27
著者
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