黒毛和種繁殖における自然交配の有用性について
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
黒毛和種の種雄牛1頭と繁殖雌牛14頭を用いて,自然発情(自然発情区)後の自然交配と発情同期化処理に基づく発情誘起(発情誘起区)による自然交配における繁殖成績を調べ,人工授精における繁殖成績と比較検討した.発情同期化処理としてCIDR(イージーブリード)を利用したオブシンク(Ovsynch : Ovary Synchronization)プログラムを用いた.それぞれの延受胎率は自然交配の自然発情区93.3%,発情誘起区50.0%,人工授精の自然発情区42.4%,発情誘起区40.0%を示し,受胎した繁殖牛1頭当たりの授精回数はそれぞれ1.1回,2.0回,2.4回,および2.5回であった.自然交配の自然発情区では14頭中13頭が初回授精にて受胎した(92.9%).また,自然交配の受胎間隔は人工授精のそれより有意に短縮され(83日短縮),345日であった(P<0.01).黒毛和種において種雄牛による自然交配により繁殖成績の向上,繁殖管理の省力化が図られ,同一種雄牛で同一月齢の子牛生産が可能になると推察された.黒毛和種種雄牛の飼養管理にかかる年間経費は,年間40頭の子牛を受胎させる繁殖経費とほぼ等しく,種雄牛による自然交配の導入は大規模繁殖農家にとって有効であると考えられる.今後は黒毛和種による自然交配で生産された子牛に対する市場評価を高めることが課題であろう.Reproductive efficiency of a Japanese Black bull to 14 cows was examined on the mating in natural estrus and introduced estrus caused by Ovsynch (Ovary Synchronization) program with CIDR (EAZI-BREED) for synchronization of estrus. The efficiency of the mating was compared with it of artificial insemination (AI) service. Conception rate on the mating to natural estrous cows was 93.3%, the number of fertilization per one conception was 1.1 times, and the scores on the mating to Ovsynch-treated cows were 50.0% and 2.0 services respectively. On AI service, conception rate in natural estrus was 42.4%, the number of fertilization per one conception was 2.4, and the scores in introduced estrus were 40.0% and 2.5 services respectively. 13 of 14 cows were conceived by the first mating in natural estrus. Moreover, conception interval on natural mating (345 days) was shorter than on AI services (428 days). From these result, it is suggested that natural mating by bull is quite useful to improvement of reproductive efficiency and labor-saving management of reproduction and make it possible to breed calves whose father is the same at the same season. On the reproductive cost, the introduction of bull is effective for farmers who raise more than 40 calves a year. To realize this natural mating in Japanese Black cows, the estimate of its produced calf would be essential on the market.
- 2005-10-31
著者
-
岩本 久雄
九大農
-
塩塚 雄二
九州大学大学院農学研究院動物資源科学部門
-
岩元 久雄
九州大学大学院農学研究院家畜生体機構学研究分野
-
衛藤 哲次
九州大学大学院農学研究院動物資源科学部門
-
岩元 久雄
九州大学大学院農学研究科畜産学専攻畜産学第二教室
関連論文
- 牛糞によるイヌビエ(Echinochloa crus-galli (L.) Beauv.)とメヒシバ(Digitaria adscendens (H.B.K.) Henr.)種子の拡散の可能性
- 牛用配合飼料としての沙棘 (サジー) 絞り粕の可能性に関する研究
- 黒毛和牛骨格筋における筋繊維型構成と骨格筋内脂肪含量の関係に関する研究
- 1-36 大分県久住高原におけるカヤネズミによる採草用牧草地の利用
- 家鴨類骨格筋の発達と組織化学的特性に及ぼす水田放飼の影響と品種差
- 採草地内エゾノギシギシ(Rumex obtusifolius) の薬剤防除に関する研究(2) : 牧草追播とMDBA散布の併用効果
- 採草地内エゾノギシギシ(Rumex obtusifolius)の薬剤防除に関する研究(1) : MDBA散布後1年間の生育パターン
- 新参牛を夜間に導入した場合の導入前後における牛群の行動比較 : 維持行動について
- 去勢雄見島牛の骨格筋に関する組織化学的研究
- 去勢雄見島牛の大腿二頭筋前部における筋線維型の分布の差異
- 生検筋肉材料の組織学および組織化学的特質による枝肉成績予測の可能性
- 去勢雄見島牛の骨格筋に関する組織化学的研究
- 去勢雄見島牛の大腿二頭筋前部における筋線維型の分布の差異
- 光質の違いがイヌビエ(Echinochloa crus-galli (L.) Beauv.)とメヒシバ(Digitaria adscendens (H.B.K) Henr.)種子の発芽に及ぼす影響
- 牛舌有郭乳頭味蕾の構造とガストデューシンの存在(1999年度日本味と匂学会第33回大会)
- 去勢雄黒毛和牛における生検筋肉材料の組織学的な特質と枝肉脂肪交雑度との相互関係
- 黒毛和種去勢雄牛の大腿二頭筋前部における筋線維型構成の部位間での比較
- ウシの消化管通過に伴う牧草種子の発芽能力の変化
- 44 九州中部高原地域の採草用牧草地におけるイヌビエとメヒシバの発生消長(2-(3)草地、芝生)(2. 雑草の防除・管理)
- 2-16 九州中部高原地域の採草地におけるイヌビエとメヒシバ埋土種子の休眠覚醒の進行と発芽特性の変化
- 2-15 変温と光質の違いがイヌビエとメヒシバの発芽に及ぼす影響
- 放牧を軸とした国内草資源フル活用による新たな肉牛飼養システムの提案(食料・環境問題に対する畜産・草地研究の貢献)
- 47 放棄果樹園におけるセイタカアワダチソウの放牧牛による採食利用(1-(4)利用、水質浄化、砂漠緑化)(1. 雑草)
- 3-15 放牧強度が異なる樹園跡地における植生の短期的変化
- 3-14 樹園跡地植生の群落内照度に及ぼす異なる放牧強度の影響
- 果樹園跡地における黒毛和牛の放牧行動パターンおよび血液性状に関する研究
- 1-20 ケイヌビエとメヒシバの初期生育におよぼす温度と遮光の影響
- 1-19 九州中部高原地域採草地におけるケイヌビ工とメヒシバの発芽時期
- 1-6 採草地更新時における基肥量が播種牧草と既存草の競争に及ぼす影響
- 黒毛和種子牛におけるグルタチオン製剤の離乳時ストレス軽減効果に関する研究
- 給与飼料の違いが黒毛和種骨格筋のマイオスタチンmRNA発現に及ぼす影響
- ウシ茸状乳頭味蕾細胞の構造とガストデューシンに対する免疫組織化学反応(解剖学)
- 去勢鶏の骨格筋成長に関する研究(2) : 体各部位骨格筋と個々の骨格筋の重量変動
- 去勢鶏の骨格筋成長に関する研究
- 鶏後肢部筋肉量に関する品種および性差について
- 鶏前肢部筋肉量に関する品種および性差について
- 鶏の産肉性に関する基礎的研究(VII) : Barred Plymouth Rock種の体格部位骨格筋の成長について
- 鶏の産肉性に関する基礎的研究(VI) : Barred Plymouth Rock種の孵化後における骨格筋,皮膚,内臓,骨および脂肪組織の成長について
- 鶏の下垂体の顕微分光測光法的研究(II) : 視床下部破壊が雄鶏の生殖機能に及ぼす影響
- 鶏の下垂体の顕微鏡分光測光法的研究(I) : 下垂体腺葉細胞の色素親和性とその吸収曲線
- 雄鶏の去勢および甲状腺除去が,その諸器官に及ぼす影響の組織学的検討
- 黒毛和種繁殖における自然交配の有用性について
- ヤギ下垂体における塩基性線維芽細胞成長因子の黄体形成ホルモン分泌細胞局在に関する免疫組織化学的研究
- Regional distribution and ultrastructural characteristics of growth hormone-secreting (GH) cells in the Adenohypophysis of Tokara goat.
- トカラ列島由来の在来ヤギにおける遺伝形質の変異について
- 黒毛和種雌牛の繁殖成績に及ぼすビタミン・ミネラル含有製剤の影響
- トカラヤギにおける乳房の形態と副乳頭の発達
- トカラヤギにおける乳房の形態と副乳頭の発達
- ニワトリの骨格筋重量に関する品種および雌雄間の差異について
- 鶏上腕部骨格筋におけるI型筋線維の退化消失
- 幼雛の体重,骨格筋重量および筋線維直径の相対成長に関する研究
- 雄鶏の頸半棘筋筋線維に及ぼすAndrogenの影響について
- 雄鶏の大腿二頭筋筋線維に及ぼすAndrogenの影響に関する組織化学的研究
- 黒毛和種,褐毛和種およびホルスタイン種の去勢雄牛間での筋線維型構成に関する比較検討
- 鹿児島バークシャー種豚の胸最長筋筋線維に関する組織化学的研究
- 豚大腰筋における筋線維型構成について
- 生後3ケ月間の飼育方法の違いが子牛の発育に及ぼす影響
- 薩摩鶏交雑ブロィラーのむね肉およびもも肉の筋線維構成に関する研究
- 鶏骨格筋重量の性成熟期における変動の品種および性差について