精子を凍結保存した患者のその後の経過

概要

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過去14年間に著者らの施設で精子凍結保存を行なった患者163例を対象に, その後の経過について検討した。疾患の内訳は精巣腫瘍72例(44.2%), 造血器腫瘍76例(46.6%), 大腸癌5例(3.0%), その他が10例であった。精巣腫瘍, 造血器腫瘍ともに初診時年齢, 既婚率, 実子の有無についての差はみられなかった。疾患別の保存精子の廃棄率は64.5～77.8%と大きな差はなかったが, その理由は疾患により異なり, 精巣腫瘍では化学療法後の造精能の回復が多く, 造血器腫瘍では死亡例が多かったが, それぞれ22, 33%の患者は現在でも精子凍結保存の継続を希望していた。実際に凍結保存精子を使用した症例は6例(3.4%)で, うち3例は精巣腫瘍, 2例は造血器腫瘍, 1例がその他の癌であった。精子使用までの凍結保存期間は3ヵ月が2例, 4, 9, 11, 12年が各1例で, AIHやICSIなどを施行したが, 現在のところ妊娠を1例(流産)に認めたのみで, 出産に至った症例はない。尚, 精子凍結保存後3ヵ月で凍結精子を使用した例のうち1例は, その後, 造精能が回復し自然妊娠している。
泌尿器科紀要刊行会の論文