対側腎無形成をともなった精嚢嚢胞に発生した乳頭状腺癌の1例

概要

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30歳男。肛門部痛, 排尿後疼痛, 血尿を主訴に受診し, 急性前立腺炎を疑い入院となった。CTにて右腎無形成と骨盤内に嚢胞性病変を認め左精管からの茶褐色液の流出と造影剤の嚢胞内への流入が見られ左精嚢嚢胞と診断した。内容液の細胞診はclass 1で定期的に精嚢嚢胞穿刺を行い, 内容液を吸引していたが12年後には症状出現期間が極めて短くなり毎月, 穿刺を繰り返すようになり内容液の細胞診はclass IIIで精嚢嚢胞壁の不整が目立つようになった。2ヵ月後にTRUS下精嚢生検と精嚢嚢胞穿刺を行い細胞診classIVで乳頭状腺癌と診断し手術目的で入院となり患者の性機能と膀胱温存希望により精嚢摘出術を施行した。精嚢と膀胱頸部での癒着が強く, 左精嚢摘出後, 周囲組織への浸潤がないことを確認し, 右精嚢も摘除したが嚢胞内面に多発性腫瘍が乳頭状に発育しており組織学的には乳頭状腺癌で一部低分化腺癌がみられ, CA125(+)であった。3ヵ月後膀胱後面に嚢胞状病変が出現し, 精嚢癌の再発と診断し, 腫瘍摘除, 膀胱全摘術, 回腸導管造設術を施行し, 放射線治療を行うも骨盤腔内腫瘍増大と肝転移のために死亡した。
泌尿器科紀要刊行会の論文