東京大学農学部附属演習林田無試験地における主要な鳥類の生息状況 : 島状に隔離された緑地の鳥類相について
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概要
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1.東京大学演習林田無試験地で,1986年5月~1987年10月にかけて計31回の鳥類センサスをおこなった。2.ツバメの生息の有無によって季節を夏と冬にわけ,季節別に種ごとの優占度と出現頻度を計算した。1回の調査あたりの記録個体数では,夏と冬の差は認められなかった。優占度では,夏の方が優占種への偏りが大きかった。出現頻度の高い種は,夏と冬で同じだった。3.優占度と出現頻度の両方が高い代表種は,ヒヨドリ・シジュウカラ・キジバト・スズメ・ムクドリ・オナガの6種で,すべて留鳥であった。4.さえずっている雄の個体数から,コジュケイ・キジバト・モズ・シジュウカラ・ホオジロの5種の繁殖つがい数を推定した。本調査地で繁殖期に生息する種数は,面積の割には多かった。5.鳥類の生息地として,本試験地の環境は周囲の緑地や農地と深い関係にあることが示唆され,それらとの複合生態系としての環境保全に留意することが望まれた。1. Belt-transect surveys of birds were conducted at the University Forest Experimental Station in Tanashi, the University of Tokyo, thirty-one times from May 10, 1986 to October 6, 1987. 2. The period was devided into the two, warm and cool, seasons according to the presence and absence of Barn Swallow, Hirundo rustica. Species dominance and observation frequency are calculated for each season. The number of individuals per survey was similar between the two seasons. Dominance was more biased to the dominant species in warm season (Kolmogorov-Smirnov's test, x22=7.61, p<5%). Frequently observed species were the same ones between the two seasons. 3. Hypsipetes amaurotis, Parus major, Streptopelia orientalis, Passer montanus and Sturunus cineraceus were the commonest species, and they are all residents. 4. The number of breeding pairs was estimated by singing males for five species (Table 3). The number of species observed in breeding seasons was larger than expected from the area-standard number around Tokyo city (HIGUCHI et al. 1982). This is caused from the difference in isolation and the forest structure among the study sites. Further information on these aspects are left to be acqired. 5. Most birds use the forest of the experimental station and the surrounding environments together. So it is desirable that the forests are conserved considering the relationships among them as the bird habitats.
- 東京大学大学院農学生命科学研究科附属演習林,The Tokyo University Forests,東京大学農学部林学科,Department of Forestry, Faculty of Agriculture, University of Tokyoの論文
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