〈原著〉 高度・重度聴覚障害者における音楽的な高さ構造の認知に関する事例的研究 : 単一音、和音、メロディの弁別実験と楽曲の印象評定から
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概要
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早期より高度・重度聴覚障害を有する3名の成人を対象に、音楽の高さに関係する構造、即ち単一音(全音と半音の音程のある2音の異同弁別)、和音(CとD,F,G,Cm,C(♭8)の異同弁別)、メロディ(輪郭の変化する5音メロディの異同弁別)、曲(「野バラ」の聴取印象)の知覚・認知についてMIDIシステムを用いた一連の実験的検討を行った。その結果、(1)単一音、和音、メロディを弁別することが十分可能な事例、和音の弁別に比較的優れた事例、いずれも困難な事例に分かれ、知覚の程度は個人差があった。(2)すべての事例において楽曲の聴取により、ある程度共通した情緒的印象が喚起された。(3)単一音弁別力、和音弁別力、メロディ弁別力と楽曲の認知との間には対応があるとはいいきれなかった。それぞれの聴覚障害者について、音楽的な音の高さ構造の各次元における処理の多様性について議論した。本研究から、聴覚障害児・者の音楽の聴取においては、単純な高さに対する聴覚的感度のみならず高さ構造の処理機構も詳細に考慮していくことの必要性が示唆された。
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