妊産婦の妊娠の状況と抑うつ状態との関連
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
目的:妊産婦の妊娠の状況と抑うつ状態との関連について調査した.方法:対象は,妊娠中からの経時的調査に協力が得られた887名のうち,全調査に回答した妊産婦590名であった.手続きとして,妊娠の状況は,妊娠後期に,質問票で以下の5つの状況からの選択を求めた.望んだ妊娠は238名,受胎受容は172名,時期尚早妊娠は103名,望まない妊娠は42名,不妊治療後妊娠は35名であった.抑うつ状態は,妊娠後期,産後5日,産後1ヵ月,産後4ヵ月にエジンバラ産後うつ病質問票(EPDS)への回答を求めた.結果:まず,妊娠の状況と出産前後の時期の2要因分散分析の結果,各時期での妊娠の状況による抑うつ状態の程度の差異として,妊娠後期は,望まない妊娠群,時期尚早妊娠群,不妊治療後妊娠群が,望んだ妊娠群,受胎受容群よりもEPDS得点が有意に高かった.産後5日も,時期尚早妊娠群と望んだ妊娠群とに有意差はなかったものの,妊娠後期と大きくは変わらなかった.産後1ヵ月は,妊娠の状況によるEPDS得点の違いはなかった.産後4ヵ月は,望まない妊娠群が望んだ妊娠群や受胎受容群よりも,また不妊治療後妊娠群が受胎受容群よりも有意に高かった.また妊娠の状況別の抑うつ状態の経時的変化として,いずれの群においても,妊娠後期が他の時期よりもEPDS得点が有意に高かった.その後,望んだ妊娠群と受胎受容群は産後5日に低下して,時期尚早妊娠群と不妊治療後妊娠群は産後1ヵ月でも有意に低下して,その程度を維持して推移したが,望まない妊娠群は,産後5日,産後1ヵ月で有意に低下して,産後4ヵ月には有意に上昇した.次に,各時期別の妊娠の状況による産後うつ病とスクリーニングされる妊産婦の比率の差異についての|2検定の結果,妊娠後期は,時期尚早妊娠群と望まない妊娠群で,EPDS区分点以上の得点の妊婦が有意に多く,受胎受容群では有意に少なかった.望んだ妊娠群でも少ない傾向があった.産後5日は,望まない妊娠群と不妊治療後妊娠群で,EPDS区分点以上の得点の産婦が多い傾向があった.産後1ヵ月は,各群間で有意差はなかった.産後4ヵ月は,望まない妊娠群でEPDS区分点以上の得点の産婦が有意に多く,不妊治療後妊娠群でも多い傾向があり,受胎受容群では少ない傾向があった.結論:以上の結果から,多様な妊娠の状況は,妊産婦の抑うつ状態の予防やケアの必要性を予測するうえで,妊娠判明時から把握できる1つの指標になり得ることが示唆された.
- 国立保健医療科学院の論文
著者
関連論文
- 地域保健スタッフの母子精神保健活動を支援する研修の評価
- 注意欠陥多動性障害、広汎性発達障害、学習障害は、お互いに関係がありますか? (特集 「発達障害」の疑問に答える(1)理論・概念篇 Q&A)
- 妊産婦の妊娠の状況と抑うつ状態との関連
- ADHD児の自尊心に関する研究 : Summer Treatment Programを通して
- 出産後の母親への自己記入式質問票を活用した援助介入
- 周産期における虐待予防活動の課題--周産期精神保健の技術研修と継続支援システム構築の取り組みから (特集 [日本子ども虐待防止学会]第13回学術集会(みえ大会))
- 福岡市における産後うつ病質問票を用いた育児支援への取り組み(第6回日本女性心身医学会研修会報告)
- 育児不安を訴える母親の愛着スタイルに着目した支援方法--妊産婦の精神症状・対人関係の特徴とわが子との相互関係との関連性
- 広汎性発達障害に併存するうつ病の診断と治療
- 周産期に精神医学的問題をもつ母親の母子相互作用と幼児早期の発達転帰
- 子どもと家族の発達と強迫性障害--養育行動と愛着の視点から (子育てとこころ--養育と愛着) -- (愛着と養育のライフサイクル)
- 児童青年精神医学会総会印象記
- 児童思春期の強迫性障害における心理社会的視点
- 出産をめぐるメンタルヘルス (特集 女性のメンタルヘルス)
- 子どもの自殺とその予防について
- マタニティーブルーズ,産褥うつ病 (今月の臨床 妊産婦と薬物治療--EBM時代に対応した必須知識) -- (妊娠中の各種疾患と薬物治療 妊娠・出産にかかわる疾患の治療と注意点)
- シンポジウム 軽度発達障害の臨床と周産期精神保健 (第6回子どもの心・体と環境を考える会学術大会記録) -- (特集 軽度発達障害--専門家の立場から)
- 危機に立つ子どもの心(2)子ども虐待--精神医学の立場から
- 周産期の生物学的変化のメンタルヘルスへの影響と薬物療法 (特集 産後うつ病の評価と介入から--育児支援に向けての新たな展開) -- (基礎的解説編 妊娠・出産・育児に関連するメンタルヘルス)
- 医療からみた落ち着きのない子 (特集 落ち着きのない子どもへの教育)
- "キレる"母親の背景と処方箋 (特集 "キレる"大人)
- 外来診療からみた母子メンタルヘルスケア(第6回日本女性心身医学会研修会報告)
- 大学病院での児童精神医学領域の役割
- 産後うつ病を発症するリスクが重複していた母親への助産師の介入(第6回日本女性心身医学会研修会報告)
- 周産期の精神医学的問題 : 関係性障害の観点から
- 私のカルテから 児童精神外来での母子2世代の自験例
- [第14回(平成21年度)島根県母性衛生学会学術集会]特別講演 妊娠と出産の精神医学と家族支援
- 現代青年の友人関係に関する研究
- 空間象徴図式の検討 : Grunwaldの空間図式からの展開
- 乳幼児精神医学50年の歩みと今後の展望
- 乳幼児臨床における精神医学の役割
- 子どもの精神医療の現状と今後の展望 : 専門医の養成を中心に(厚生労働科学研究柳澤班共催)
- 妊産婦の心のケア : エビデンスに基づいた実践(第45回日本母性衛生学会総会学術集会)
- 子どものうつ病の診断と治療 (うつ病は治るか) -- (ライフサイクルと治るうつ病)
- 大学病院での児童精神医学領域の役割
- 広汎性発達障害と統合失調症スペクトラム障害の診断学的重なり
- 子どもの問題 : ─母親のメンタルヘルスとその育児を支える─
- 乳幼児期の睡眠障害と親のメンタルヘルス (特集 睡眠の基礎と最新の知見)
- 過剰な心配,人前で緊張し息苦しくなる,予期不安--不安障害 (特集 小児科医が知っておくべき思春期の心) -- (訴えや症状からみた心の問題)
- 子どもの不安と母子関係 (特集 子どもの不安とどう向き合うか)
- 小児科・精神科の連携と児童精神医学研修 : ロンドン大学・モーズレイ病院での研修の紹介と応用も含めて (第51回日本児童青年精神医学会総会特集(2)スローガン 児童青年精神医学の新たな展開 : リエゾン(連携)とレジリエンス(復元力)) -- (シンポジウム 小児科と精神科の連携)
- 自閉症スペクトラム障害の早期介入と環境調整 : 地域における発達支援の取り組みの経験から (特集 発達障害の早期発見・早期療育) -- (発達障害の早期発見・早期療育 : わが国の現状)
- 小児科・精神科の連携と児童精神医学研修 : ロンドン大学・モーズレイ病院での研修の紹介と応用も含めて
- 自閉症スペクトラム障害と統合失調症 : その連続性と非連続性について (第52回日本児童青年精神医学会総会特集(2)スローガン : 子どもと大人の児童青年精神医学) -- (シンポジウム 自閉症スペクトラムと青年成人期精神障害の接点)
- 自閉症スペクトラム障害と統合失調症 : その連続性と非連続性について
- 妊産婦の妊娠の状況と抑うつ状態との関連