ADHD児の自尊心に関する研究 : Summer Treatment Programを通して
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概要
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本研究では,まず,米国のニューヨーク州立大学のバッファロー校を中心として行われているSummer Treatment Program(STP)を紹介する。STPは,ADHD児に対する行動療法と薬物療法による包括的な短期集中的支援プログラムである。次いで,調査1としてADHD児の自尊心について,調査2として2005年の夏にわが国で初めて行われたSTPのADHD児の自尊心に及ぼす効果について報告する。調査1では,ADHD児8名を対象にSelf Perception Profile for Children(SPPC)を実施した。この尺度は学業・友人関係・スポーツ・スタイル・行動・自己価値の6領域におけるそれぞれの自信を測定する。一般児童の自尊心の程度と比較をしたところ,ADHD児の自尊心は全体として一般児童と比べて低くはないという結果が得られた。しかし,個別に見てみると,いずれの領域においても高い児童や低い児童が存在するために,個別の特徴に着目することの必要性が示唆された。調査2では,調査1と同様の対象児に対して,同様の調査をSTP参加終了直後に実施した。参加直前と参加直後のSPPC得点の変化のパターンから,いずれの対象児においても,またいずれの領域においても,参加直前のSPPCの得点が一般児童よりも高い場合は参加直後のSPPCの得点は維持ないし低下する傾向が,平均的な場合は変化なく維持される傾向が,低い場合は維持ないし向上する傾向があることが伺えた。ただし,行動の領域においては,対象児の参加直前のSPPCの得点の一般児童に対する高低にかかわらず,参加直後のSPPCの得点は維持ないし向上する傾向にあることがわかった。また,対人関係能力,スポーツ能力,学習上の能力の向上度をSTP中に見られた各能力に対応した行動数の変化から測定した。学習上の能力については,プログラム中に実施された学習課題の回答率と正答率からも測定した。これらの測度とSPPC得点の向上の程度との関連性を検討した結果,学習課題の正答率を高めることが自尊心の向上につながる可能性があることが示唆された。
著者
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