再生可能エネルギー社会への転換の意義と地域自給に関する一考察 ─J.S. Mill と H.E. Daly の所論を手がかりにして─
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概要
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再生可能エネルギーを基盤とした社会への転換は大きな経済社会変革を伴うものであり,そうした社会のヴィジョンは政治経済学的に議論されて然るべきである。J.S.ミルは「停止状態」論において,富と人口の増加が停止した状態でこそ理想的な社会が実現されうる可能性を示唆した。これは Sustainable Devel-opment 概念が提示する環境的持続可能性および平等の視点を含むものとして先駆的であったといえる。H.E.デイリーは,ミル「停止状態」論を念頭に置きつつ,現代の環境危機的視点から独自の「定常状態」論を展開した。「定常状態」において,経済は地球のサブシステムとして位置づけられると同時に,環境容量を超えない最適規模を実現していくことが求められる。この最適規模の実現手法,ひいては「定常状態」への移行プロセスについて,デイリーは資源減耗量割当制度にみられるように,世界的な取り決めとして使用できる資源量の上限をあらかじめ設定することで,経済の最適規模を実現することを提案した。 再生可能エネルギーは潜在量こそ豊富だが立地条件,気象条件,技術的制約などによって使用できる量には上限がある。したがって,再生可能エネルギー社会への転換というのは,直接的には気候変動への対応であるが,長期的には利用できるエネルギーの範囲内で経済活動を行っていくことを意味することになる。これはデイリーが資源減耗量割当制度で意図した資源使用量の上限設定をエネルギーに関して実行していることになる。再生可能エネルギーへの転換は,まさに「定常状態」社会の実現に向けたひとつの手法でありプロセスとして位置づけることができる。
- 2013-12-16
著者
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