RatnakarasantiのSutrasamuccayabhasyaにおいて言及されるインド仏教の論師たち
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概要
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Ratnakarasantiは後期インド仏教の重要な論師の一人であり,瑜伽行唯識派に属しているとされる.その彼に,中観派の開祖とされるNagarjunaのSutrasamuccayaに対する注釈書Sutrasamuccayabhasya-ratnalokalamkaraがある.そこではNagarjunaに対する言及が最も多く見られるが,その多くは瑜伽行派の開祖とされるAsangaと並べて言及される.Nagarjuna単独で言及される場合は,Ratnavaliからの引用が多い.彼の著書の中で,同論は一般的な教義を論じているために,経典の注釈において言及しやすかったのであろう.またPancakramaも引用されるため,彼は注釈者により密教論者としても認識されていたことがわかる.MaitreyaやAsanga単独での言及も多く見られる.中でも,Mahayanasutralamkaraの引用が最も多いのは,やはり引用経典を解説するのに便利な著書であったのであろう.Vasubandhuへの言及は,仏教教義の語句説明の際にAbhidharmakosaが引用されるのみで,Trimsikaは引用されるものの,Maitreyaの著書とされている.その他には,DhrmakirtiのPramanavarttikaが引用され,論理学の知識は解説の前提となっている.AsvaghosaとSuraや,アビダルマの論師も僅かに言及されている.中観と唯識の教義については,前者の八不や離一多性論証なども見られるものの,後者の八識説・三性説・如来蔵説などが多く見られる.注釈者は,両者の思想的矛盾には言及せず,前者の見解を後者で補って解説している.また,悟りの段階についてAsangaをNagarjunaより上位においている.このことから,注釈者は中観の開祖の著書を唯識の立場で解説していることがわかるが,そこに両派の学派的差異の認識は認められない.
- 2013-03-25
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