Dol po paはRatnagotravibhagaをどのように読んだのか
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概要
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Dol po paShes rab rgyal mtshan(1292-1361)の著作の中には,Theg pa chen po rgyud bal ma'i bstan bcos kyi 'grel pa legs bshad nyi ma'i 'od zerと言うRatnagotravibhagaに対する注釈書がある.コロフォンによると,二人の弟子であるdPal ldan brtson'grusとPhun tshogs dpal(1304-1377)による請願に基づいてJo nangで著されたものである.注釈スタイルは,多くのチベット仏教文献においてなされるように,詳細なシノプシスに分類される形で著されたものであり,その各項目にRatnagotravibhagaの偈頒が対応し,根本偈に言葉を補足する形体で注釈がなされている.そこには,先行する注釈書に対する言及や自らの「他空説」などにより論を展開することはない.従って,本論では各注釈部分の内容を通して彼がRatnagotravibhagaの偈頒をどのように読んでいたのかと,このシノプシスの構成を分析することにより彼が同論の全体構造をどのように理解していたのかが解明できるだけの注釈書である.他の文献への言及については,NagarjunaのDharmadhatustava 11のみが引用されている.Maitreyaの五法に対する言及もないのに,本論が引用されることは,独自の思想を確立するために,同論が重要な役割を果たしていたことを裏付けるものでもある.しかしながら,その注釈文には「他空説」や「大中観」への言及はないことから,本注釈書は彼のそのような思想を確立する前に著されたテキストなのかもしれない.彼の主著であるRi chos nges don rgya mtshoにはRatnagotravibhagaに基づいて独自の思想を展開するコンテキストが多く見られることから,本注釈書はそれに先行して著されたものと思われる.
- 2009-03-25
著者
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