記号と言語と条件反射 : 鈴木孝夫の『鳥類の音声活動-記号論的考察』に刺激されて(テキスト・談話,思考と言語一般)
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概要
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筆者は2010年3月から2012年4月にかけて,言語学者の鈴木孝夫先生を囲んで隔月で行われたサロン「タカの会」に参加し,鈴木先生の著作を読みお話を伺う機会を得た.本で読んだだけでは伺いしれない著者の発想や実験での苦労話を直接伺うという稀有な経験をすることができたことは,自らが行ってきた言語の起源とメカニズムの研究にとって実に有用であった.この場をお借りして鈴木先生ならびにタカの会の事務局を運営していた方々に厚くお礼申し上げたい.そしてこの会で耳にしたこと学んだことがいったいどのような発想やブレークスルーに結びついたかということを,ここで報告したい.ともに記号に関することで,ひとつは「空の記号」である.ヒトは感情から独立した記号を恣意的に作り出すことができる.筆者は「空の記号」を音節として受け取ったが,鈴木先生は単語の音韻部分(morpheme,イヌという音)として考えておられた.この違いについて検討を試みる.もうひとつは「記号は生得解発機構(反射)の連鎖を生みだす」というTimbergenやLorenzら動物生態学者の見解の紹介である.鈴木先生は《言語》的要素を動物の伝達行為の内に発見しようとするのではなく,逆に動物としての記号活動の面を人間の《言語》の内に見出そうとする逆転の発想で記号論に挑まれた.Timbergenは解発刺激は,単純化されたパターン記憶とその移動方向であることを明らかにした.「本能は反射である」とすると,動物生態学者のいう生得解発機構とPavlov(パブロフ)の反射・条件反射は,入力刺激とパターン記憶との一致によって発生する記号現象である.そのメカニズムを考察した.
- 2012-06-16
著者
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