社会的に公正な生物資源保全に求められる「深い地域理解」 : 「保全におけるシンプリフィケーション」に関する一考察
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
熱帯諸国において「参加型保全」は、中央集権的で一元的な保全に代わる手法として注目を集めた。しかし、保全を進める「よそ者」と地域住民との非対称的な力関係を背景に、参加型保全の取り組みにおいても、しばしば、ローカルな文脈に埋め込まれた複雑で多面的な人と自然とのかかわりあいは、過度に単純化され、不適切な形で表象されてきた。本論文では、そうした表象に基づいて立案・実施された生物資源を対象とする保全施策(希少種の保護や生物多様性保全)が、ローカルな文脈に埋め込まれていた複雑で多面的な「人と自然とのかかわりあい」をより制御しやすい形に一元化・規格化し、再編成していく作用を「保全におけるシンプリフィケーション」と呼んでその具体例を挙げ、それが地域の人びとにどのような受苦を強いる可能性があるかを論じる。そして、人びとに受苦を強いることのない社会的に公正な保全を実現するために、保全にかかわる外部者には「深い地域理解」が求められることを指摘した。
- 2012-05-20
著者
関連論文
- 熱帯僻地山村における「救荒収入源」としての野生動物の役割--インドネシア東部セラム島の商業的オウム猟の事例
- 「サゴ基盤型根栽農耕」と森林景観のかかわりインドネシア東部セラム島 Manusela 村の事例
- Customary Forest Resource Management in Seram Island, Central Maluku : The "Seli Kaitahu"System
- 「超自然的強制」が支える森林資源管理 : インドネシア東部セラム島山地民の事例より
- フィールド便り 忘れられた当たり前を探す:目からウロコのフィールドワーク(2)セラム島山地民の必要充足的市場参加
- 『生』を充実させる営為」としての野生動物利用-インドネシア東部セラム島における狩猟獣利用の社会文化的意味-
- インドネシア東部セラム島の在来農業と自然景観の関わり--「根栽畑」経営の小規模性と景観の多様性に着目して
- 特集 インドネシア東部沿岸住民による海産資源管理の実態と今後の課題
- サゴヤシを保有することの意味 : セラム島高地のサゴ食民のモノグラフ
- 書評 内田道雄著『消える森の謎を追う インドネシアの消えゆく森を訪ねて』
- 治安維持を名目にした国軍の「紛争地ビジネス」--インドネシア東部マルク諸島
- インドネシア 再燃したインドネシアのアンボン抗争
- インドネシア マルク「宗教抗争」の裏側
- インドネシア 追い詰められるセラム島の山地民
- セラム島のクスクス猟--インドネシア東部島嶼地域の慣習的な森林利用と管理
- ケイ・ブッサール(Kei Besar)島の慣習法に基づく資源管理
- 社会的に公正な生物資源保全に求められる 「深い地域理解」 : 「保全におけるシンプリフィケーション」に関する一考察
- 社会的に公正な生物資源保全に求められる「深い地域理解」 : 「保全におけるシンプリフィケーション」に関する一考察
- アーボリカルチュアが生み出す野生動物と人のかかわりあい:インドネシア東部島嶼部住民による多様な森の創出
- 内田道雄著, 『消える森の謎を追う インドネシアの消えゆく森を訪ねて』, 創栄出版, 2005年5月, 207頁, 1,680円, ISBN:4-434-06207-7