土壌リン脂質と微生物バイオマス・群集構造

概要

論文の詳細を見る
土壌中の微生物バイオマス量と微生物群集の構造を解析するため,各種畑土壌から抽出したリン脂質の脂肪酸組成の比較,リン脂質脂肪酸含量と直接検鏡法による土壌細菌数および可給態窒素量との関係について検討した。1.クロロホルムくん蒸処理を行うと土壌リン脂質含量は58-77%に低下しており,土壌から抽出されたリン脂質は土壌微生物バイオマスに由来する割合が高いと考えられた。2.堆肥連用区及び無施用区の土壌において,リン脂質脂肪酸含量は堆肥施用量の増加に伴い増加した。また,土壌別で比較すると,リン脂質脂肪酸含量は厚層多腐植質黒ボク土>淡色黒ボク土>灰色低地土>赤色土の順であり,土壌層位別では0-10cm,10-20cmに比べ20-30cmの層位のリン脂質脂肪酸含量が低かった。3.土壌リン脂質を構成する脂肪酸は細菌由来の脂肪酸が大部分であると考えられた。堆肥施用量の増加に伴い分枝脂肪酸の割合が高まったが,3,4月に採取した土壌の分枝脂肪酸の割合は低く,逆に環状脂肪酸,16:1ω7及び18:1ω7の合量の割合は3,4月が高かった。このことから,コムギの栽培中に土壌中のグラム陰性菌の割合が増加することが予想された。4.主成分分析をリン脂質脂肪酸組成に適用した結果,土壌の採取時期を区別する情報は主に主成分1(寄与率43.0%),土壌型の違いを区別する情報は主に主成分2(寄与率24.0%)に存在した。クラスター分析では,デンドログラムに土壌採取時期別の2つのクラスターが存在した。5.直接検鏡法により求めた土壌細菌数と土壌リン脂質脂肪酸含量の間には高い相関が認められた。また,土壌中のリン脂質脂肪酸含量は可給態窒素量と相関が高く,その要因は糸状菌バイオマス量よりも細菌バイオマス量の方が大きいと考えられた。6.リン脂質脂肪酸含量に基づく細菌バイオマス炭素量は直接検鏡法に基づく値より高い値が得られた。微生物バイオマス量の測定のためには,バイオマス由来のリン脂質の割合やその土壌による差などをさらに検討する必要があると考えられた。
1998-03-01

土壌リン脂質と微生物バイオマス・群集構造

スポンサーリンク

概要

著者

関連論文

スポンサーリンク