コラボレイティヴ・アプローチは、いかにして実践しうるのか : 筆者の、治療者としての思考のあり方を手がかりとした考察
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概要
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コラボレイティヴ・アプローチにおいて重要なことがらは、方法論ではなく、認識論であることについて述べた。その認識論は、20世紀において主要な立場を築いてきた実証主義とは全く異なる、社会構成主義である。社会構成主義は、"現実"を客観的事実としてとらえるのではなく、人々の対話の中で構成され続けるものとしてとらえる。そのため、「ことば」や「人」や「アイデンティティ」についてのとらえ方が実証主義とは全く異なることについて述べた。また、社会構成主義によるものごとのとらえかたが、臨床場面においてどのように反映されるのかについて、筆者自身の、治療者としての思考のあり方が社会構成主義以前とどのように異なるのかを題材として考察し、社会構成主義の認識によっておこなった事例の初回面接での逐語を提示した。そして、事例提示そのものもコラボレイティヴでありたいと考えることから、初回面接についての来談者の感想も記述した。事例の考察については、治療者の一方的な表明を避け、今後の課題として、来談者とともに考察を共同作成する試みについて述べた。結語として、コラボレイティヴ・アプローチの意義と可能性が、来談者との対等な現実構成のあり方を模索することにあることを述べた。
- 日本ブリーフサイコセラピー学会の論文
- 2002-12-30
著者
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