当院における高カルシウム血症の病因・病態の解析と治療 ─高カルシウム血症クリーゼも含めて─
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概要
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獨協医科大学病院内分泌代謝内科に関連する過去6 年間の入院患者の内,高Ca 血症を呈した91 例について,その病因,病態と治療について検討した.原発性副甲状腺機能亢進症67 例(73.6%),慢性腎不全に伴う三次性副甲状腺機能亢進症10 例(11.0%),腫瘍随伴性高Ca 血症6 例(6.6%),VitD/Ca 過量投与4 例(4.4%),バセドウ病4 例(4.4%)であった.平均年齢は61 歳で,男性27 例に対し女性64 例であった.これら5 群間における血清補正Ca(cCa)値に差はなかったが,血清P 値は慢性腎不全による三次性副甲状腺機能亢進症が最も高く,バセドウ病,VitD/Ca 過量投与,腫瘍随伴性高Ca 血症,原発性副甲状腺機能亢進症の順に低下した.慢性腎不全例を除く4 群において,血清補正Ca(cCa)値あるいはcCaxP 値と血清creatinine(Cr)との間には,有意な正相関が認められた.原発性副甲状腺機能亢進症の内48 例は副甲状腺摘出術を受けたが,19 例は内科的治療や経過観察となった.手術群の方が年齢が若く,血清cCa 値が高く,またintact PTH(iPTH)も高値を示していた.三次性副甲状腺機能亢進症10 例の内3 例は,副甲状腺摘出,自家移植を受けた.腫瘍随伴性高Ca 血症6 例の内PTH-related protein(PTHrP)高値を示すhumoral hypercalcemia of malignancy(HHM)が4 例,local osteolytic hypercalcemia (LOH)が1 例及び両機序による混合型1 例であった.VitD/Ca 過量投与は薬剤中止あるいは減量投与により軽快し,バセドウ病は甲状腺ホルモン低下に伴い正常化した.高Ca 血症91 例中8 例(8.8%)は血清cCa 値が14.5 mg/dl を超える高Ca 血症クリーゼであり,原発性副甲状腺機能亢進症6 例,腫瘍随伴性高Ca 血症1 例,VitD/Ca 過量投与1 例であった.クリーゼに対する緊急的また積極的治療により7 例は軽快したが,原発性副甲状腺機能亢進症の1 例は治療抵抗性で,最終的には心室細動を起こし死亡した.高Ca 血症クリーゼの死亡率は8 例中1 例で12.5%,原発性副甲状腺機能亢進症に起因する例に限れば高Ca 血症クリーゼは67 例中6 例で9.0%,その死亡率は6 例中1 例で16.7%であった.本研究は91 名に及ぶ,高Ca 血症の患者を対象としており,このような報告は本邦では貴重である.さらに各病態において詳細な解析を行っており,今後の高Ca 血症の病態把握や,重症度判定に本研究は極めて有用であると考えられた.高Ca 血症を認めた場合には,その成因,病態について迅速かつ十分な検討を行い,必要に応じた適切な治療を早期に行うことが重要である.
- 2012-03-25
著者
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笠井 貴久男
獨協医科大学内科学(内分泌代謝)
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百目木 希実
獨協医科大学内科学(内分泌代謝)
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川越 宣明
獨協医科大学内科学(内分泌代謝)
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加瀬 浩之
獨協医科大学内科学(内分泌代謝)
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笠井 貴久男
獨協医科大学内分泌代謝内科
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笠井 貴久男
獨協医科大学
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鈴木 國弘
獨協医科大学内科学(内分泌代謝)
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笠井 貴久男
内科学(内分泌代謝)
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作田 亜有子
獨協医科大学内科学(内分泌代謝)
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飯嶋 寿江
獨協医科大学内科学(内分泌代謝)
-
鈴木 國弘
獨協医科大学内分泌代謝内科
-
加瀬 浩之
獨協医科大学内分泌代謝内科
-
鈴木 國弘
獨協医科大学 内科学(内分泌代謝)
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