水質および河川改修履歴とコウホネ属植物個体群の分布との関連性 : 高知市神田川における事例
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概要
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スイレン科コウホネ属の絶滅危惧種ベニオグラコウホネは、浮葉と沈水葉を持つ多年生の水生植物であり、国内での分布は中国地方、四国、九州に限られる。本研究では、高知県神田川において、水質および河川の改修履歴に着目し、ベニオグラコウホネを含むコウホネ属植物の分布を調査した。神田川の流程は地理的には後背低地(St.1〜3)と扇状地縁辺部(St.4〜15)に区分され、水質は両者の境界部で明瞭な変化を示した。後背低地の流程に対し、扇状地縁辺部の流程では夏期の水温が低く、また、年間を通じ電気伝導度およびpHが低いことが認められた。また、RpHは全ての調査地点・日時を通じて高かった(8.12〜8.30)のに対し、pHは特に扇状地縁辺部の流程で相対的に低い値を示した(6.65〜7.37)。これらの結果から、扇状地縁辺部の流程は湧水の影響を強く受けており、年間を通してCO_2が過飽和状態にあると考えられた。コウホネ属植物の生育地は湧水地帯に位置し、CO_2が過飽和状態にあることがコウホネ属植物の光合成を促進し生育を保証する重要な要因であると考えられた。しかしながら、コウホネ属植物の分布は流程内の2地点のみに限られており、生育可能と推定される湧水影響下の流程に対し、実際の分布は狭かった。旧版地図および航空写真の判読から、神田川の河道はかつて大きく蛇行しており、1930〜1940年代の改修により直線化されたことが明らかとなった。旧河道、直線化河道、現存するコウホネ属植物の生育地を同一地図上にプロットした結果、現存する2ヵ所のコウホネ属植物の生育地は、旧河道と直線化河道の重複部分に一致した。神田川では、近年におけるコウホネ属植物の個体の新規加入は極めて少ないと推定され、その保全には、種子繁殖による個体の新規加入を促進することが必要と考えられる。
- 2011-11-30
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