銀河鉄道の「鳥捕り」狐仮説からみた宮沢賢治の重層的世界
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概要
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宮沢賢治の未完の長編「銀河鉄道の夜」の数多い登場人物のなかで、最も印象的で、かつ最も論議の的であった「鳥捕り」を取り上げ、その出現する場が「狐座」(雁を咥えた子狐座)であり、民話的な背景としては「後藤野の親分狐」の化身であり、自らを孤独な狐のように思った賢治自身も投影されている、という重層的な背景から「鳥捕り」は狐が転生した、もしくは狐が化けたもの、すなわち元来は狐であるという説を提唱する。「鳥捕り」は風貌や行動が狐に似るのみならず、類似の他の賢治作品「氷河鼠の毛皮」の狐の間謀と共通点が多いことなどの諸点からも、その正体は狐であると判断された。この「鳥捕り」実は狐の挿話は、賢治の菓子好きや義人を志向した賢治自身が味わった孤独感や挫折感とも関わり、また、野生動物を取り巻く環境の危機を懸念し、狐の側に立つ賢治の見方を示唆するものでもあるなど、賢治の多様な心情を映すものであった。「銀河鉄道の夜」は未完かつ難解な原稿のまま遺されたが、「鳥捕り」は狐という仮説を立ててみると、賢治が伝えようとしたメッセージが見えてくると考えられるのである。
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