賢治寓話「茨海小学校」とその背景 : 環境教育教材としての活用と関わって
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概要
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宮沢賢治の寓話「茨海小学校」は、茨海の野原で農学校教師が狐小学校を参観してくるという話で、幻想的であり一般には童話とみなされているものの、大人向けの逆説的、風刺的な作品である。物語の発端である農学校教師が探した火山弾やハマナスについて検討し、岩手山麓、滝沢付近を茨海のモデルと推定した。しかし、狐小学校は賢治の勤めていた花巻農学校がモデルであることが、校舎の内部の構成や時間割、卒業生の進路、生徒や教師の性別など、多くの点から明らかになった。物語に草の罠や狐捕りの罠が登場するが、作品全体にさまざまな罠、トリックが散りばめられている。狐小学校の教育内容は、人間の学校、特に農学校のそれの裏返しというべきもので、狐の側からの見方と、人間の側からの見方とが対比的に描かれている。野生動物を考える環境教育の教材として「茨海小学校」は役立つと思われるが、対象者は子どもでなく、成人を相手とする生涯学習の教材に相応しいと考える。しかし、この作品の真骨頂は、いわゆる"擬人化"した狐物語のようにみえて、実は"擬獣化"(擬狐化)の物語であるところにある。
- 2006-03-01
著者
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