子どもの社会能力評価「かかわり指標」の妥当性と信頼性
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概要
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目的 : 本研究は、子育ち・子育て支援における評価指標として活用が可能な「かかわり指標」の子ども側面評価の妥当性と信頼性について、気になる子どもの評価を通じて明らかにすることを目的とした。方法 : 対象は2〜6歳の「気になる子ども」と保育士により評価された全国18ヶ所の保育園児40名であり、同一検査者による「かかわり指標」を用いた観察、および関連機関の診断と所見を合わせて分析した。注意欠陥多動性障害(ADHD)4名、広汎性発達障害(PDD)6名、知的障害(MR)4名、発達境界領域22名、虐待3名、ネグレクト4名、家庭での不適切なかかわり31名、養育者が高ストレス28名(いずれも疑いを含む)に該当する子どもを抽出し、かかわり指標の各項目との関連および敏感度と特異変を算出した。すべて2名の評価者で評価し信頼性は85%以上、内的妥当性は0.94であった。結果 : 項目別に見ると、ADHDでは<主体性領域>の「養育者が話している最中に微笑む、笑う」、MRでは<感情制御領域>の「養育者に助けやなぐさめを求める」、虐待では<主体性領域>の「養育者からの応答を主体的に引き出そうとする」の項目について、100%リスクとなっていた。ADHD、PDD、MRは、いずれも<主体性領域><応答性領域><共感性領域><感情制御領域>にリスクの高い項目が多くなっていた。考察 : 今回の気になる子どもは、すべての子どもが確定診断ではなく「疑い」の状態を含むものの、敏感度と特異度が十分に高いことが示された。「かかわり指標」は、子どもの社会的相互作用の質を短時間の行動観察により客観的に測定できるという点において他に類を見ないツールであり、今後の活用が期待される。
- 日本保健福祉学会の論文
- 2007-09-30
著者
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安梅 勅江
筑波大学大学院人間総合科学研究科
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安梅 勅江
科学技術振興機構社会技術研究開発センター
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篠原 亮次
筑波大学大学院人間総合科学研究科国際発達ケア研究室
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杉澤 悠圭
筑波大学大学院人間総合科学研究科国際発達ケア研究室
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矢藤 優子
立命館大学文学部:jst
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矢藤 優子
独立行政法人科学技術振興機構社会技術研究開発センター:立命館大学
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篠原 亮次
山梨大学医学工学総合研究部
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杉澤 悠圭
筑波大学医学医療系
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安梅 勅江
筑波大学大学院人間総合研究科
-
矢藤 優子
立命館大学文学部
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