日本における「言語コード論」の実証的検討 : 小学校入学時に言語的格差は存在するか
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概要
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本稿の目的は,バーンスティンの言語コード論の視点から,二つの課題に対して考察することである。第一に,子どもたちに言語運用上の傾向性の差異はあるのかということ。第二に,異なる言語コードを規定する環境的要因について考察することである。本稿では,まず,本稿で用いる主要な概念である言語コード論について概略する。次に,調査の概要を示し,そのうえで子どもの用いる言語コードの違いが言語運用にどう表出するのかを明らかにする。そして,子どもたちの有する言語コードの違いを規定する環境的要因について検討を行う。具体的には,小学校1年生に対する「物語作り」調査を行い,そこでみられる言語運用と家庭環境の関連について分析を行った。その際,文脈依存性の観点から,日本語に特徴的に表れる主語や格助詞の省略に着目した。その結果,二つの主な知見が得られた。まず,主語を省略する傾向にある精密コードを有していない子どもは,発話開始までに時間を要する傾向があることを示した。本稿で示したもう一つの知見は,精密コードの獲得が,親の職業,家族構成によって左右されるというものであった。この点に関して,精密コードを用いた人格的統制様式が,ホワイトカラー層においてさらに強化されている可能性を指摘した。また,家族構成の違いによる獲得コードの違いから,彼らの家庭では,精密コードの獲得機会が相対的に少ないという可能性も指摘した。
- 2011-06-10
著者
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