内因性インスリン分泌が緩徐に枯渇していった肥満2型糖尿病の一例

概要

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症例は57歳、女性.1983年(31歳)、8月糖尿病と診断され、グリベンクラミド5mgが開始された.食事負荷試験(MTT)では追加分泌の低下を認めた.同年9月インスリン1回法が開始.同年11月、インスリン2回法に変更.32歳時、妊娠が判明. 33歳、尿ケトンが3+となることが多くなったが、同年無事出産.出産後のMTTでは基礎分泌も枯渇に近い状態であった.34歳、尿ケトン1+程度となった.49歳時、インスリン4回法に変更.同年12月、尿ケトンが再び増加し2+となった.51歳、HbA1c 10.2%まで悪化し、インスリン5回法に変更.57歳、血糖コントロール目的に当科入院.体重67.7kg、BMI 28.1kg/m2、HbA1c 7.6%、抗GAD抗体は陰性、抗IA-2抗体も陰性、TG 102mg/dl, LDL-C 175mg/dl, HDL-C 59mg/dlであった.MTTで、内因性インスリン分泌の枯渇を認めた.食事療法の徹底、インスリン調整で血糖値は改善した. 考察:糖尿病診断時、すでに内因性インスリン分泌は低下しており、その後2年間で更に急激な内因性インスリン分泌の低下を生じ、診断26年後に完全枯渇に至っている.本症例の内因性インスリン分泌低下の原因として、妊娠・出産によるインスリン抵抗性に対する過剰インスリン分泌という負荷、長期の高血糖状態、肥満や脂質異常症の合併等が考えられる.妊娠・出産後の厳格な血糖コントロールができれば、その後長期に渡る内因性インスリン分泌低下は緩和されたかもしれない.本症例では使用していないが、メトホルミンやαグルコシダーゼ阻害薬等の投与は、補助的な効果をもたらした可能性がある. 2型糖尿病治療薬の種類が増えたが、内因性インスリン分泌能の低下を防ぐ治療の確立には至っておらず、内因性インスリン分泌の低下を防止する治療の確立が望まれる.
2011-03-31

内因性インスリン分泌が緩徐に枯渇していった肥満2型糖尿病の一例

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