特別養護老人ホームの待機者調査にみる待機者及びその介護者へのアウトリーチの必要性
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概要
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本稿の目的は,特別養護老人ホーム(以下,特養)の待機者に対する積極的なサービス展開の必要性を提言することである.本稿では,待機者問題を,現実的には困難な待機者の削減という政策上の課題や,優先入所に関する妥当な基準の模索に限定して捉えるのではなく,一定の待機者の存在を前提とした上で,アウトリーチの視点から待機者を捉え直す.2009年3月から6月に行った郵送調査法の結果,計348通を配票したうち, 最終的に195通(56.0%)が返送され,そのうち,本人による回答及び無記入による不明を除く164人を分析対象とした.その結果,配票した調査票に占める分析対象の標本率は47.1%となった.分析にはx^2検定,対応のないt検定,Spearmanの順位相関係数,Kruskal Wallisの検定,Mann-Whitneyの検定を用いた.分析の結果,介護者の施設への不満足感及びサポートニーズに関して,以下の3つが明らかになった.第1に待機年数の長短と施設への不満感等とは関係がなかった.第2に待機者のADLの変化と施設への不満感等とは関係があった.第3に他者への交わり,機関の利用が少ないという意味で社会性が低い待機者を介護する介護者は,施設への不満足感を持っていることが明らかになった.特に第1の結果からは,待機年数と施設への不満足感等が関係ないとしても,期間が長くなれば施設が把握している現況が妥当でなくなっている可能性を述べ,入所決定時の面談ではなく,それまでの定期的な再アセスメントの必要性を指摘した.第3の結果からは,「孤独」「孤立」している待機者の介護者は今以上の(直接的な)ケアや関わりを現施設に求めているとし,「孤独」「孤立」を防ぐようなアウトリーチのあり方を,施設へのアクセシビリティ等を勘案しながら模索すべきであると指摘した.
著者
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