噴火湾における春季ブルームの一次生産とその行方(シンポジウム:噴火湾の物質循環における春季珪藻ブルームの役割)

概要

論文の詳細を見る
噴火湾における珪藻類の春季ブルームの一次生産量とその生産された有機炭素の行方を明らかにするために観測を行った.ブルームのピーク時に測定された一次生産量はこれまでの報告値より数倍高い値が得られ,積算した春季ブルームによる有機物生産は74gCm^<-2>と推定され年間の一次生産量の半分近くが春季ブルーム時の1ヶ月間に生産されている.しかし,この時期大型の動物プランクトンが少ないことから捕食圧は低く,一次生産のほとんどが沈降粒子として分解されると思われる.4月以降底層付近で酸素消費と栄養塩の再生が起こり,ブルーム後の2ヶ月間にブルームで利用された50%の栄養塩が再生している.ブルーム以降,有光層において栄養塩が枯渇状態にあるが,4-5月は河川から供給される栄養塩と残存している栄養塩を利用することにより一次生産が維持され,また6月以降は底層付近で再生した栄養塩が,津軽暖流水の流入によって作り出される湧昇流によって有光層に運ばれ夏季の一次生産に寄与するものと思われる.また,珪藻ブルーム起源の溶存有機物を利用した微生物食物網も夏季の高い大型動物プランクトンの餌要求に寄与している可能性が示唆された.
日本海洋学会の論文
2000-08-25